e福島県の避難者 家族一緒に住める環境を

  • 2014.04.30
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年4月30日(水)付



働く場の創出、住み替え要件緩和で



避難者の窮状が、あらためて浮き彫りになった。

福島県は28日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う避難者6万2812世帯(約13万2500人)を対象にしたアンケート結果を発表した。これまで避難指示区域の市町村ごとの調査は実施されてきたが、自主避難を含む避難者全体を対象にした調査は初めてだ。

調査結果を早急に分析し、市町村、県、国のそれぞれが取り組むべき対策を検討し、実行に移してもらいたい。

同調査では、震災前に一緒に暮らしていた家族の48.9%が、別々の住まいに分かれて生活している実態が明らかになった。

もともと大家族が多いためか、仮設住宅や自治体による借り上げ住宅では手狭のため、同居が難しい。一家で暮らしたくても通勤可能な場所で仕事を見つけられず、家族が離れて暮らすケースもある。

住居に対する要望では、仮設住宅や借り上げ住宅の入居期間の延長が40%程度あったほか、住み替えの柔軟な対応も約26%に上った。福島県では仮設住宅の場合、空き住戸があれば住み替えを認めているが、借り上げ住宅も住み替え要件を緩和するなど、柔軟に対応すべきではないか。

農業や漁業など基幹産業の活性化も重要だ。現在、被災地では建設業など復興関連の分野で求人動向は逼迫しているが、人手が必要な地域や職種は限られてしまう。震災前に働いていた仕事の経験や技術を生かせる職場が増えれば、働き先の選択肢も広がり、家族が一緒に暮らせる住まいも見つけやすくなる。県下の産業育成のためにも、あらゆる手立てを惜しんではならない。

避難の長期化で体調を崩す人も増えている。同調査では、避難後に心身の不調を訴えるようになった同居家族がいる世帯は67.5%と3分の2を超す。保健師や看護師などを派遣する回数を増やし、健康相談や心のケアの充実に力を注ぐべきである。

震災前のふるさとに戻れるかどうか分からない不安も、つきまとう。同調査では、県内の10.6%、県外の36%の避難者が、ふるさとに戻るか「現時点では決まっていない」と回答した。

最大の課題は除染である。作業のスピードを上げ、進捗状況を分かりやすく周知してほしい。

避難者の状況は千差万別である。今回の調査を今後も定期的に行い、一人一人の要望に応えるキメ細かい支援策を徹底して進めてもらいたい。

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