e福島職員の心のケア 支援強化の仕組み不可欠
- 2014.05.23
- 情勢/解説
公明新聞:2014年5月23日(金)付
15%がうつ病 "原発ストレス"が危機水準に
「福島再生」が足元から揺らぐことになりかねない。早急な対応が必要だ。
東京電力福島第1原発事故で避難区域となった福島県沿岸部の自治体で、職員の"心の病"が深刻化していることが分かった。
福島県立医科大学などのグループが、沿岸部の、ある自治体を対象に実施した調査で浮き彫りになったもので、それによると、この自治体のほぼ全ての職員92人のうち、15%に当たる14人が「大うつ病性障害」と診断されていたことが判明。92人中、8人に自殺の危険があることも明らかとなった。
グループは今後、他の避難区域自治体でも調査を進める予定だが、「どの自治体でも同様の数字が出る可能性が高く、極めて深刻な事態」と警告を発している。
「驚くべき高い割合で精神疾患が発症している」(前田正治・福島医大教授)背景に"原発ストレス"があることは容易に想像できる。
グループがまとめた調査報告も、原発事故以降、仕事量が増大したことや、住民からの強い非難にさらされたことに加え、職員自身が被災者で家族ばらばらになっていること、復興のめどが立たないことなどが複合的な要因となって精神疾患を発症させていると分析している。
言うまでもなく、福島沿岸市町村の職員は、被災の最前線に立って復興と再生の重責を担う人々である。除染や賠償業務から集団移転、医療・福祉・教育などに至るまで、彼ら現場職員の存在なくして復興業務の進展はない。
その意味で、避難区域職員の7人に1人が心の病を患っている現実を憂慮しないわけにはいかない。"もう一つの復興対策"として、政府は職員の心のケア対策の充実に全力を挙げる必要がある。
ポイントは、深刻化する一方の職員不足の克服だろう。
慢性的な職員不足は被災3県に共通する課題だが、とりわけ原発周辺市町村では、被災や避難を理由に早期退職した職員が少なくない。残った職員1人当たりの仕事量は事故前の数倍に膨れ上がっている。全国の自治体からの職員派遣も、原発事故の風評でともすれば敬遠されがちだ。
これでは慢性疲労が蓄積し、やがて働く意欲が低下して精神疾患へとつながっていくのも当然だろう。
福島再生のカギは地元職員の覇気にあり―。原発周辺自治体職員の支援を強化する仕組みづくりが、喫緊の課題として急浮上していることを重ねて強調しておきたい。