eだいち2号 "宇宙の目"を防災に生かせ
- 2014.05.27
- 情勢/解説
公明新聞:2014年5月27日(火)付
各国と技術協力進め、国際貢献を
高性能レーダーで災害状況や地形の変化を観測する人工衛星「だいち2号」が先週末、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられ、地球周回軌道への投入に成功した。約半年後から本格的な観測が開始される予定だ。
だいち2号は、東日本大震災による津波の浸水などを観測した「だいち」の後継機だ。初代の「だいち」に比べ、観測可能な範囲は約3倍の幅2320キロに広がり、1メートルから3メートルの大きさの物体をも識別する能力を備えている。
仮に大規模災害が発生して橋や道路が損壊して地上からの確認も難しい場合でも、"宇宙からの目"によって被災地の状況をいち早く掌握することができるようになる。迅速な救助や救援物資の搬送ルートを検討する重要な判断材料となろう。
国民の命を守る防災・減災対策に積極的に役立ててもらいたい。
人工衛星などを使って離れた位置から対象物を観測する技術は「リモートセンシング」と呼ばれる。この技術の活用分野は防災だけでなく、森林の違法伐採の監視や資源探査、土地管理などの環境・経済分野でも利用が拡大している。技術の研究開発に取り組む意義は大きい。
ただし、衛星から得られる情報の利用に課題がないわけではない。
例えば、東日本大震災では、「だいち」が撮影した画像が関係省庁に配布されたものの、十分に分析できる人が少なかったと指摘されている。衛星の画像から有益な情報を読み取ることができる人材を育成する体制が求められている。
一方、近年、急速な都市化が進み自然災害の被害が頻発するアジアなどの新興国でも、リモートセンシング衛星への関心は非常に高まりつつある。
日本は優れた宇宙技術を保有しており、国際貢献を果たしていくチャンスだ。衛星の共同運用や衛星データの相互利用を進めていくことは、相手国の防災能力などを高めるだけでなく、日本国内の宇宙ビジネスの振興にもつながると期待される。
宇宙ビジネスは、ロケットや衛星に限らず、その技術を活用した民生機器、サービスなどの関連産業も含め広がりが大きく、有望な成長分野である。
すでに日本は東南アジア各国と衛星画像データの相互提供や人材育成などに向け協力を進めているが、こうした取り組みを強化・発展させていきたい。