e中小企業 高齢化と後継者難が深刻
- 2014.05.28
- 情勢/解説
公明新聞:2014年5月28日(水)付
事業承継支援で地域の活力守れ
全企業数の99.7%を占め、日本経済の屋台骨である中小企業・小規模事業者に、高齢化と後継者不足の深刻な波が押し寄せている。その実態が、2014年度版の中小企業白書であらためて明らかになった。
それによると、70歳以上の自営業主数は、20年前の2倍以上の約75万人と過去最高だった。中小企業・小規模事業者数は、13年前から約100万者減の385万者で、直近3年間では35万者も減った。
昨年、休廃業・解散した企業件数は約2万9000件で、10年前の2倍以上に急増した。廃業を決めた理由は、「経営者の高齢化、健康の問題」が、半数近くの48.3%を占める。廃業について相談した相手は「家族・親族」が48%で、「誰にも相談していない」は約3割、商工会議所や商工会、税理士などへの相談は1割未満だったという。
中小・小規模事業者の多くは、地域密着型の経営が中心だ。家族・親族に限らず、第三者への事業承継、後継者づくりを早急に進めなければ地域が活力を失い、人口減少と過疎化を加速させかねない。
一方で、後継者の育成も進んでいない。事業を引き継ぐ準備ができていない経営者は、60歳代で約6割、70歳代で約5割、80歳代で約4割を占めたという。担い手となる起業希望者は15年前の半分の約84万人と過去最低で、開業率の低さについて白書は、(1)起業意識(2)起業後の生活・収入の不安定化(3)起業に伴うコストや手続き―などの要因を指摘している。
喫緊の対策として、まずは全国13カ所に設置の事業引継ぎ支援センターが、起業希望者と承継したい人とをつなげる、マッチングを加速化させることが重要だ。さらに、経済産業省が全国約300カ所で進める創業スクールと連携強化し、担い手確保に努めてもらいたい。長期的な取り組みとして、義務教育から起業への関心を高める工夫も必要だろう。人材確保、起業家の掘り起こしに向け、あらゆる手を尽くすべきだ。
事業承継に当たっては、事務手続きや相続税の支払いといった面での負担も重く、対策が必要だ。廃業時と事業承継時とでは、経営者の退職金に当たる共済金額に差があることから、小規模企業共済の拡充も考えたい。当然、情報通信技術(ICT)や海外の成長を取り込む、新たな事業展開に向けた経営支援の強化も望まれる。
本格的な経済再生に向け、中小企業・小規模事業者への支援に、総力を挙げたい。