e介護離職 社員にも企業にも痛手
- 2014.06.04
- 情勢/解説
公明新聞:2014年6月4日(水)付
柔軟に働ける環境づくり急げ
家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」が増えている。このため、政府は、仕事と介護の両立に有効な支援制度を探る実証事業を始める。2014年度中に効果的な事例をまとめ、企業に普及・啓発していく方針だ。
仕事と介護の両立には、企業の理解と支援が欠かせない。実効性ある取り組みにつなげてほしい。
実証事業では公募などで選定した100社に対して、厚生労働省が昨年度策定した両立支援モデルを導入・実践してもらう。
総務省によると、07年10月~12年9月までに家族の介護や看護を理由に離職した人は、43万9300人に上り、40、50代が半数を超す。今後、5年間でいわゆる「団塊世代」が70代になり、介護との両立に直面する人がより一層増えると予想される。
働き盛りで退職すると、再就職の道は険しい。要介護者を抱え、収入が減少すれば生活への影響は避けられない。ただでさえ、人手不足の時代に突入すると指摘されている今、経験豊富な人材を失うことは企業にとっても痛手だ。家族の介護に直面しても、社員が働き続けられる職場づくりを急がなければならない。
介護は育児と異なり、突然、家族が対応を迫られることが多い。企業は社員に対して、事前に介護に関する支援制度の情報を周知しておくことや、介護が必要になったときに相談しやすい体制を整備しておくべきだろう。
すでに独自の支援策を実施している企業も少なくない。大手住宅メーカーでは、介護休業の期間を法定日数より増やし、分割して取れるようにした。また、失効した有給休暇を介護に利用できるようにしたり、介護費用で負担がかかる家計の支援に踏み出す企業もある。参考になる取り組みだ。
人事部にも相談しない「隠れ介護者」が多いという。企業は積極的に社員の家族の状況に目配りし、必要な支援策を進めてほしい。
一方、国の支援制度は十分だろうか。介護休業や介護休暇の取得率は極めて低い。要因の一つに、休業に伴う収入の減少が指摘されている。介護休業給付金の増額を検討すべきではないか。
介護は先行きの見通しがつきにくい上に、個人の状況はさまざまだ。社員が柔軟に働けるよう、介護休業制度を大幅に見直すべきである。
老親を抱える社員が安心して働ける環境づくりは急務だ。官民一体で支援策の充実に取り組んでもらいたい。