e農産物の地理的表示 品質保証は競争力高める

  • 2014.06.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月5日(木)付



日本ブランドを世界に売り込め



政府は、2020年までに農水産物や食品の輸出額を1兆円に拡大する方針を掲げている。その一環として、日本のおいしい食品などをブランド化することで、さらに価値を高めるための法律案を今国会に提出している。

この「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案」は、地域の伝統や特性を持ち、一定の品質を保持する農水産物や加工食品に地理的表示を認め、国がその権利を保護することが目的だ。世界100カ国以上が同様の地理的表示保護制度を導入しており、日本は後じんを拝している。来年4月施行予定だが、参院で審議が滞っており、一刻も早い成立を望みたい。

地域名を使用するブランドについて以前は、「特定の者の独占になじまない」などの理由から、全国的な知名度を得ているもの以外は、商標法での登録はほとんど認められなかった。そこで特許庁は06年度から、地域名と商品との関係が明確といった要件を満たせば登録が認められる「地域団体商標」制度をスタートさせた。既に約550件が登録されている。

ただ、この制度には品質についての基準はないため、優れた生産技術の結晶として高い品質を誇る農産品・食品の保護に向かないという声が上がっていた。「勝手に名称を使用したり、模倣したりする例が後を絶たない」(農水省)ため、信用やブランド力が落ちて生産者が不利益を被ることもあるという。

農水省は、地理的表示が認められた産品を統一して「ジャパンブランド」化し、国が積極的に海外進出・販売を支援するとともに、「権利侵害がないか国が責任を持って監視し保護する」と意欲的だ。熱心な農業者や製造業者の努力を保護するためにも、地理的表示と品質を保証する制度は必須だ。

経済開発協力機構(OECD)は今年発表した日本に対する政策提言で、「高価値食物が海外で人気を博しているという事実を最大限に利用」すれば、輸出目標の達成は可能と指摘した。実際、リンゴやメロン、イチゴといった果物は、高価だが売れ行きは好調という。価格競争では海外に太刀打ちできない物もあるが、品質と安全性、こだわりといった付加価値を高めれば世界に引けを取らない。

消費者にとっても、地理的表示保護制度は重要だ。統一ブランド名やマークなども今後決める予定らしいが、誰にも分かりやすく親しみやすいものにすることも、価値を高める要素となろう。

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