e欧州中銀マイナス金利 デフレ阻止の決意に期待
- 2014.06.10
- 情勢/解説
公明新聞:2014年6月10日(火)付
日本は円高の進行に警戒怠るな
欧州中央銀行(ECB)が、異例のマイナス金利導入に踏み切った。
預金者保護のため、民間銀行は中央銀行の口座に一定額以上の預金を義務付けられている。通常、中央銀行は預金に対し金利を支払うがマイナス金利が適用されると、逆に民間銀行が中央銀行に金利を支払う。そのため民間銀行にすれば、預金分を融資に回し貸出金利を得た方が利益になる。融資が拡大すれば、欧州連合(EU)経済の活性化につながるという論理だ。マイナス金利に期待する政策効果は、ここにある。
2009年の欧州債務問題の発生後、EU経済は南欧を中心に需要に急ブレーキがかかり、物価が上がりにくい。急激な物価下落が経済に悪影響を与える「デフレ」の瀬戸際だ。恒常的な物価下落は企業収益を圧迫し、従業員の給料は伸び悩んだり、目減りする。従業員の収入が増えなければ、物やサービスの消費量も落ち込む。日本が克服しつつある課題に、EUが直面しているといえよう。負の経済循環である「デフレスパイラル」に至れば、世界経済への悪影響も避けられない。
ユーロ圏の消費者物価指数の伸び率は"危険水域"である1%以下の状態が続く。経済成長が順調なドイツと、低成長に苦しむフランスとの間で、マイナス金利の必要性を巡る対立が表面化したため、EUを揺るがす火種になるとの指摘もある。ECBのドラギ総裁は政策の影響を慎重に見極める姿勢を示したが、効果が現れるまで1年近くかかるといわれ、EU経済の不透明な状況は今後も続く。
EU経済の停滞は、本格的な経済成長をめざす日本にとっても無視できない。国内総生産(GDP)で世界の約25%を占めるEUは、米国や中国と並ぶ重要な貿易相手である。新たな金融政策でEU経済の立て直しに挑むECBの手腕に期待したい。
日本も早急に取り組むべき点がある。今月に策定予定の新たな成長戦略は、世界も注目する政策だ。国内需要の喚起で輸入貿易額が増加すれば、恩恵はEUをはじめ国際市場にも広がるだろう。持続的な成長に向けた取り組みは、国際社会の一員として日本が果たすべき役割だ。
一方で、注視すべきこともある。マイナス金利は、為替市場でユーロ安を招く。現時点で極端なユーロ安傾向は見られないが、効果が浸透すれば円高要因となり、回復しつつある日本の輸出を圧迫する。ECBは世界市場への配慮も忘れないでほしい。