eがん治療 患者の緩和ケアが不十分

  • 2014.06.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月11日(水)付



家族も含め手厚い支援体制を



厚生労働省は今月から、がん患者の苦痛を和らげる緩和ケアの在り方を検討する会議を新体制でスタートさせた。

検討会では、主に(1)がんと診断された時からの緩和ケアを実現するための施策(2)地域で緩和ケアを提供するための施策―について議論する。

がん対策推進基本計画には切れ目のない緩和ケアの提供の必要性が掲げられているが、まだ十分とは言えない。

国は全国どこでも質の高いがん医療が受けられる体制をつくるため、専門的ながん医療を提供する全国の397病院を「がん診療連携拠点病院」に指定している。

厚生労働省が拠点病院を対象に実施した調査では、がん患者への適切な緩和ケアや家族への対応が十分に提供されていない実態が判明した。拠点病院がこの状況では、患者の痛みや辛さは、どこまで軽くなるのか疑問だ。

今年1月には緩和ケアの提供の徹底などを求める新たな指定要件が通知された。拠点病院への新指定要件の徹底・浸透が重要になる。

多くの人にとって、がんと診断されると、ショックは計り知れない。国立がん研究センターの研究班がまとめた調査によれば、がんと診断された患者が1年以内に自殺する件数は、がん患者以外の約20倍に上る。患者が抱える苦悩の大きさをあらためて示す衝撃的な調査結果である。

さらに、治療が始まると患者の生活は大きく変わり、ストレスも強まる。本人の心理的ケアをはじめ、家族に対しても、手厚い支援を進めなければならない。

がんの身体的な苦痛は、モルヒネなど医療用麻薬の適正な使用で9割以上が取り除くことができる。ところが、日本では医療用麻薬の使用量が欧米主要国と比較するとかなり少ない。苦痛をできるだけ取り除くために、現在の使用量を見直す必要はないか、議論してほしい。

がん患者が住み慣れた家庭や地域で安心して療養生活を送るためには、地域社会で緩和ケアを提供する体制の整備も欠かせない。検討会では拠点病院と地域の医療機関との連携強化に取り組む施設の好事例を調査する方針だ。他地域でも参考になるような取り組みを見つけ出し、周知してもらいたい。

がんは今や、日本人の2人に1人がかかる「国民病」である。それだけに、緩和ケアの在り方は限られた人々の問題ではない。検討会では、患者の視点から議論し、充実した対策をできるだけ早く進めるべきである。

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