e年金積立金の運用 成長戦略との連動に期待
- 2014.06.12
- 情勢/解説
公明新聞:2014年6月12日(木)付
「安全と効率」の両立堅持こそ重要
国民年金と厚生年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革に注目が集まっている。
昨年11月の有識者会議の提言を受けて、これまでの国債中心の運用を見直し、国内株式の比重を高める動きが加速しているからだ。
GPIFは、昨年末で128兆5790億円の運用資産を持つ世界最大規模の年金基金である。長期的な観点からの資産の構成割合(基本ポートフォリオ)は現在、国債など国内債券60%プラスマイナス8%、国内株式12%同6%、外国債券11%同5%、外国株式12%同5%、短期資産5%と定められている。
GPIFが国内株式の保有を1%増やすだけで、株式市場には1兆円以上の資金が流入することから、株高への追い風になるとみられており、今月末に閣議決定される政府の新たな成長戦略にも盛り込まれる予定だ。
現在、デフレ脱却は着実に進んでいる。近い将来、長期国債の金利上昇(国債価格の低下)が予想されるなかで、GPIFの国債中心の資金運用は得策とはいえない。また、日銀の「異次元の金融緩和」によって、株価上昇が起こり、企業の再生、業績の好転がもたらされ、それがさらに株価上昇につながる好循環が期待されている。
株式の保有比率が低いままでは、利益を得るチャンスを逃す恐れもあり、投資の効率は良くない。政府としては、成長戦略にGPIFの積立金運用を連動させたいところだ。
年金財政において、現役世代の保険料水準を固定化し、受給世代にはできるだけ高い給付水準を保つためには、運用収益と積立金の活用は不可欠であり、GPIFの役割は重要である。だが、その資金運用に当たっては、効率とともに安全も求められていることを忘れてはならない。
世界的な経済危機に見舞われると、株価は暴落する。長期的には回復するとしても、株式の保有割合を高めることばかり強調されると、安全運用への不安を招きかねない。
運用見直しといっても、GPIFが、国内株式の保有割合を一挙に増やしたり、株式一辺倒でいくということではなく、基本的には国債中心で安全な運用をめざす姿勢に変わりはないはずだ。
運用のプロの採用をはじめとする体制の強化や投資先の監視など、GPIF改革への期待は大きい。効率を追求しながら、安全を重視していく姿勢をGPIFはさらに発信していくべきであろう。