e電力の小売り自由化 賢い選択が競争・変革促す

  • 2014.06.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月17日(火)付



安定供給確保と料金下げに努力を



60年以上にわたり続いてきた、電力供給の仕組みが大きく変わる。

安定した電力を供給する代わりに電力会社に認められている地域ごとの小売り独占を撤廃する改正電気事業法が今国会で成立したからだ。2年後をめどに全面自由化されることになった。

電力会社が、発電から供給まで一体で担う仕組みは、確かに戦後の経済発展と生活の質向上を支えてきた。一方で、競争原理が働かないため高コスト構造にメスが入りにくいことや、利用者が電力会社を選べないなどの批判が根強い。

何よりも、"安全・安価"とされてきた原子力発電の信頼が、東日本大震災時の東京電力福島第1原子力発電所事故で根底から覆り、計画停電の実施は安定供給さえおぼつかない状況であったことを露呈した。硬直化した電力供給構造を転換し、再生可能エネルギーの開発の加速化、省エネルギーと節電対策を強化するための当然の改革といえよう。

電力の小売り自由化によって、消費者は今後、生活スタイルに合わせて電力事業者を自由に選ぶことが可能だ。例えば、日中は外出がちで夜間に電力を多く消費する家庭の場合、夜の時間帯は料金が安価になるサービスを選択できる。太陽光や風力などで発電した電気に特化して利用したい人は、そうした事業者と契約可能になろう。

気になる料金だが、消費者保護の観点から一定期間は大手電力会社に対する料金規制が残るため、急激な値上がりの恐れは少ない。むしろ、競争が活発になれば、ガスや携帯電話など既にある多様なサービスと電力供給のセット割引、省エネの努力に応じた価格契約も期待できよう。一方で、離島や山間部などの地域で安定供給面や料金引き上げが懸念されていたが、格差が生じないよう義務付けされた。確実な実行を期待したい。

既に自由化した米国や欧州を見ると、必ずしも自由化と電力料金引き下げが連動しているとはいえない。各国で状況は違うが、燃料価格の高騰や再生可能エネルギーの買い取り賦課金などが料金に影響する場合もある。とはいえ、長年、市場の競争にさらされてこなかった日本の電力料金は、活発な新規参入や予定されている送配電部門の分離が行われれば、十分に下がる余地があろう。

消費者の選択が、事業者の変革や改善、競争を促すことにつながる。どの電力を利用すべきか、賢い選択が今後は求められる。

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