e地域包括ケアシステム 医療や介護自治体の工夫で
- 2014.06.20
- 情勢/解説
公明新聞:2014年6月20日(金)付
サービス、人材、住まいの確保急げ
高齢者が住み慣れた地域で医療、介護、生活支援などのサービスを一体で受けられる地域包括ケアシステムの実現に向け、いよいよ取り組みを本格化させていきたい。
同システム構築への第一歩となる医療・介護総合確保推進法が18日、成立した。今後は同法に盛り込まれた財政支援制度などを活用し、各地域の実情を踏まえたシステムをどう具体化するか、自治体の取り組みが焦点になる。
いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、高齢者が安心して暮らせる地域社会をつくり上げていかなければならない。
同法では、効率的で質の高い医療を行うための病床の機能分化・連携や、在宅医療・介護を推進する新たな基金が都道府県に設置される。財源は消費税の増税分である。
一部のマスコミは、同法成立までの過程で国民の負担増や制度のサービス低下を強調してきた。しかし、医療や介護の利用者が増え、その予算を確保するには、制度の見直しは必要だ。同法では一律の負担増を避けるために、低所得者の介護保険料の軽減措置を拡充する一方で、一定の収入がある高齢者は介護保険の自己負担割合を引き上げ、経済力に応じてメリハリをつけている。
高齢者の急増に対応するには、現在の「施設」中心から「在宅」中心のサービスに切り替えざるを得ない。在宅生活を支える定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型居宅介護サービス、訪問看護などの充実が不可欠だ。
ただ、都市部と山間部などでは高齢化の進み方や地域が抱える課題が大きく異なる。地域包括支援センターが運営する地域ケア会議などを通じて、その地域に適した効果的なサービス体系を組み立て、計画的に実行すべきである。
サービスを提供する人材の確保も大切だ。介護職員の処遇改善などに取り組まなければならない。
同法では、要支援者向けのサービスの一部を市町村事業に移行し、多様なサービスを実施できるようにする。担い手となるNPOや町内会などの支援・育成も欠かせない。
また、来年4月からは特別養護老人ホームへの入居者を原則、要介護3以上の高齢者に重点化する。要介護1、2でも、やむを得ない事情があれば入所可能だが、高齢者の住まいの確保は待ったなしの課題だ。サービス付き住宅の一層の普及とともに、空き家の活用などによって低所得者でも入居できる住居の整備を急ぐべきだ。