e緊迫のイラク情勢 内戦突入の回避へ全力を
- 2014.06.24
- 情勢/解説
公明新聞:2014年6月24日(火)付
国際社会の外交努力と支援が重要
イラク情勢が緊迫の度を増している。
イスラム教スンニ派の過激派「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が、イラク国内で支配地域を拡大、首都バグダッドにも迫る勢いである。
ISISは、イラクと隣国のシリアにまたがって活動する武装組織であり、シリア内戦で勢力を伸長させてきた。シリアとの国境検問所を制圧したことで、戦闘員や大量の武器がイラク国内へ次々と運び込まれる恐れが高くなった。この混乱に乗じて、少数民族クルド人は分離への動きを活発化させている。
このままでは内戦状態に陥り、"国家分裂"の危機も現実味を帯びてくるため、周辺国は警戒を強めている。
背景には、宗派や民族を巡るさまざまな対立がある。
イラクは人口の6割をシーア派アラブ人が占め、スンニ派アラブ人とクルド人が、それぞれ2割を占める。しかし、イラクのマリキ首相は、自らの支持基盤であるシーア派を優遇し、スンニ派を排除する政権運営を長年続けてきた。マリキ政権に対するスンニ派住民たちの不満が、ISISの台頭を許した格好になっている。
米国のオバマ大統領は、イラク支援策として、最大300人の軍事顧問を派遣すると発表した上で、イラク政府に国内融和を強く要請した。国際社会もイラク政府を支えつつ、あらゆる外交努力を展開していく必要がある。
イラク情勢は、シリアをはじめ中東の周辺国に波紋を広げている。シーア派が多数のイランは、マリキ政権を支援するため軍事介入の構えを示している。これに対して、スンニ派の王制国家サウジアラビアが反発を強めている。
中東地域全体が不安定になるような事態は、何としても防がなければならない。
ISISの攻撃によって多数の死者が出ているが、家を失った避難民は50万人程度に上るとみられる。人道危機も極めて深刻である。
米国は、避難民への支援として、国連難民高等弁務官事務所などに1280万ドル(約13億円)を拠出すると発表した。日本政府も人道支援を検討していることを明らかにした。一刻も早い対応が求められる。
原油価格は、産油国イラクの情勢不安で高騰している。世界経済や国民生活への打撃を抑えるためにも、事態の収拾を急がなければならない。
関係各国が協力して、これ以上の混乱回避へ全力を尽くすべきである。