e世論調査 メディアの多用目立つ

  • 2014.06.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月26日(木)付



選択肢の設計などで異なる結果に



「不断の投票」といわれる世論調査は、現代の政治に欠かせない。だが、同一テーマについての世論調査結果が、メディアによって大きく異なることがある。

現在、議論されている集団的自衛権の行使をめぐる世論調査でも、その結果は「容認反対56%」(朝日6月23日付)と「容認派が7割」(読売6月2日付)に代表されるように、反対多数と賛成多数が新聞社によって逆になっている。しかも、その調査結果が、各新聞社の論調と合致していることから、調査の在り方などをめぐり、議論を呼んでいる。

質問項目や回答の選択肢をどう設計するかによって、世論調査の結果は違ってくる。朝日、毎日は、質問に際して集団的自衛権について、「日本に対する攻撃とみなして一緒に戦う権利のこと」「憲法上行使できない」などと強調し、「反対」(行使できない立場を維持)か「賛成」(行使できるようにする)かの二者択一で回答を求めた。

一方、読売、産経は、集団的自衛権について「日本への攻撃とみなして反撃する権利」などと、説明した上で、その使用について、「全面的に使えるようにすべきだ」「必要最小限(の範囲)で使えるようにすべきだ」「必要はない」と三つの選択肢を用意した。読売、産経ともに「必要最小限(の範囲)」に約6割の支持が集まり、「容認」が多数を占めた。「必要最低限」という項目が回答者の大きな受け皿となったようだ。

メディアが世論調査への依存を強め、競って早々と調査を実施する傾向は強まるばかりだ。世論調査で表れるのは大衆感情(世論)であり、公的な意見(輿論)ではないともいわれるが、回答者の理解が深まっていない段階で、しばしば調査は実施される。

説明文や質問の順序によって、回答が無意識のうちに誘導される現象はよく知られている。だが、ひとたび世論調査の結果が判明すると、そこから、記事が生まれ、解説が加えられていく。

この間、テレビ番組などで世論調査が「活用」され、世論が定着していく。世論調査から世論が生まれるような事態さえ見られるのである。

近年、各新聞社は安保・外交政策などで独自色を強めている。社論を補強するために、世論調査を活用するような印象が強まれば、メディアとしての信頼性は損なわれかねない。

国民が世論調査の数値をうのみにせず、これらを読み解く力を養うことが求められていることは言うまでもない。

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