e多忙な日本の教員 生徒と接する時間は十分か

  • 2014.07.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月2日(水)付



教育に専念できる環境を整備せよ



日本の学校教員が、子どもたちと接する時間と精神的ゆとりを失いつつある証拠だ。経済協力開発機構(OECD)が、世界各国の中学校教諭の勤務実態に関する調査結果を公表した。

教育現場の多忙さは以前から問題となっていたが、肝心の授業が17.7時間と調査参加国平均の19.3時間より短い実態が改めて浮き彫りになった。例えば、現代政治や経済の理解に欠かせない近代史の授業が時間切れで割愛されるなどの状況は改善されておらず、授業時間の減少が教育の質低下の一因となっている疑いがある。

調査対象は中学校のみだが、小学校や他の教育現場でも教員の多忙さが問題になっている。そもそも、学校は子どもたちが知識を身に付ける場であるだけでなく、教員や友人たちとの交流を通じ、心豊かな人格を形成する場でもあるべきだ。教員が事務作業に忙殺され、子どもたちと接する時間を奪われている事態は大問題である。

調査は学級運営や教科指導など指導面でも、多くの教員が強い不安を抱えていることを示した。「学校秩序を乱す行動を抑える」「生徒に自信を持たせる」などの調査項目で「(指導を)よくできている」と回答した割合は、いずれも参加国平均を大幅に下回った。校長のリーダーシップに対する自己評価も総じて低い。

いじめ対策や英語力の向上など教育への期待が大きく高まる中で、現場の負担に対する配慮は十分だったか。教育そのものに教員が専念できる環境を整えなければ、期待が空回りしかねない。諸外国では教員を授業に集中させるため、補助スタッフを多数配置するのが一般的だ。

米国は進路指導、特別支援教育、外国人児童生徒への指導に加え、生徒指導の一部も教員以外のスタッフが担っており、参考になる。教育に直接関係ない事務作業であれば、守秘義務などの責任を明確化して外部委託してもよいのではないか。

12年度から実施する中学校学習指導要領が部活動を学校教育の一環とし「地域の人々との協力」で運営を工夫するよう求めている点に注目したい。部活動に限らず、急務である高度なグローバル人材の育成も含め、学校教育本来の枠を超える部分が増えている。社会全体の協力は時代の流れといえよう。

教育の結果責任を学校のみに負わせるのではなく、地域社会も主体的に貢献する教育も重要になっている。

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