e生活困窮者の自立支援 地域ぐるみの連携が重要

  • 2014.07.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月5日(土)付



専門知識を持った人材の養成を



経済的に困窮する人の就労や暮らしの改善を手助けする厚生労働省のモデル事業が各地で進んでいる。

モデル事業は、生活困窮者自立支援法が来年4月に施行されるのを前に、支援の在り方や課題を検証するのが目的だ。昨年度は68自治体で行われ、今年度は254自治体が実施に名乗りを上げている。

生活保護受給世帯数は今年3月時点で過去最多の160万2163世帯となり、増え続けている。高齢者世帯が47%を占めるが、働ける可能性のある現役世代を含む「その他」の世帯も18%に達する。

生活保護を受給していなくても、失業や非正規雇用などの事情によって生活が困窮している人は多い。いずれ、生活保護制度を利用せざるを得ない"予備群"ともみられており、受給に至る前の早い段階からの対策が欠かせない。

支援法は、自治体に総合的な相談窓口を設置し、生活困窮者ごとの支援計画を策定することを義務付ける。「貧困の連鎖」を防ぐために貧困家庭の子どもへの学習支援なども行える。きめ細かく対応できる多様な支援メニューの準備が重要になる。

既に厚労省のモデル事業を実施して、成果を挙げている自治体もある。

例えば、滋賀県野洲市では、34の課・センターで構成される市民相談総合推進委員会が困窮者の情報を共有し、市民生活相談課に相談機能を集約した。給食費などの滞納情報を糸口に、個人情報に十分に配慮しながら困窮状態を確認し、問題解決につなげたケースもある。

自治体の部局を横断した対応が、効果を発揮したといえよう。

一方、北海道釧路市では、生活困窮者が本格的に働く前の「中間的就労」の場として、漁網作りに取り組んでいる。漁網作りは手作業に頼るしかなく、後継者も不足しているため、地域産業の活性化に役立っているという。

生活困窮者が抱える事情には、病気や多重債務、引きこもり、アルコール依存などの問題が複雑に絡み合っているケースが少なくない。解決は一筋縄ではいかない。

支援事業を担う専門的な知識や能力、ノウハウを持った人材が重要になる。研修会の開催など人材の養成体制を強化しなければならない。

また、自治体がNPO法人などの関係団体と、困窮者の個別情報を共有していくには、信頼関係を築くことが前提となり、時間がかかる。計画的な取り組みで、地域ぐるみの支援を進めたい。

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