e閣議決定どう見るか

  • 2014.07.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月8日(火)付



平和主義を具現化した中身
今後の法整備で 新3要件の厳格な歯止め貫け
三重中京大学名誉教授(憲法・防衛法) 浜谷 英博氏



「日本を戦争のできる国にするものだ」などという批判があるが、憲法の掲げる平和主義の理念は全く変わっていない。むしろ、その理念を今この時の国際安全保障環境に合わせて具現化し、「自衛の措置」がどこまで認められるのかという限界を示したのが今回の閣議決定だ。

山口那津男代表が言われている通り、憲法の理念や規範性は守られており、中身も極めて妥当なものといえよう。

自衛権発動に関しては、公明党の主張も入れ、厳格な「新3要件」が定められた。今後、より大事なのは"これを歯止めにしよう"との意思を皆が持っているかどうかだ。閣議決定に基づく法整備として十数本に上る法案が国会で審議される見通しで、国民にも政府をきちんと監視していくことが求められる。

併せて、日本の安保法制も、法律に書かれていることだけが実行できるこれまでのポジティブリスト(根拠規定)の構造から、禁止するものを法律に書き込むネガティブリスト(禁止規定)へと変えていくべきだ。そうすることで、想定外のことが起こり得る緊急事態に現場が柔軟に動けるようになる。

また、議論の拙速さを指摘する声もあったが、反対派から見れば、どんな場合も拙速だ。問題意識を共有する専門家は、何十年も前から考え、指摘し続けてきたことだ。危機管理の観点で言えば、もっと早いほうがよかった。

とはいえ、国民の理解は欠かせない。その意味では、公明党が与党協議に臨むに当たり、党内論議を重ねてきたことを高く評価している。民主主義は結論に至るプロセス(過程)が大事であり、議論を尽くすことを前提としているシステムだからだ。こうした姿勢が政府・与党全体に議論の落ち着きと成熟さをもたらしたと見ている。

今回の閣議決定の賛成派、反対派を問わず、すべての国民は戦争など望んではいない。「反戦・平和」の理想をめざすことでは一致している。今後、国民の理解を得るには、レッテル張りの応酬ではなく、その理想を実現できるだけの政策のリアリティー(現実感)を議論の中心にすべきだろう。

思えば、今でこそ日本の国際貢献として高い評価を得ているPKO(国連平和維持活動)も、PKO協力法が成立した1992年当時は、「自衛隊の海外派兵だ」「戦争への道につながる」などと多くの非難にさらされた。そうした中、地道な説明と自衛隊の実際の活動を通して国民の理解も深まり、今では大半の国民が支持するまでに変わった。

もとより政党には、世論に耳を傾けるとともに、世論を形成する役割もある。安保法制の論戦のけん引役として、平和の党・公明党に期待したい。

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