e脳卒中対策を強化へ

  • 2014.07.09
  • 情勢/社会
[画像]メインイメージ

公明新聞:2014年7月9日(水)付



自公などが基本法案 迅速な搬送・治療めざす



国民病といわれる脳卒中の対策充実に向け、自民、公明など4党が6月18日に参院に提出した「脳卒中対策基本法案」。先の通常国会では継続審査となったが、秋の臨時国会での成立をめざして今後、議論が本格化する見通しだ。

脳卒中は、脳の血管が血栓(血の塊)などで詰まる脳梗塞や、血管が破れる脳出血、くも膜下出血により、脳細胞が壊死してしまう病気。要介護状態になる原因の第1位【グラフ参照】であり、死因では第4位だ。2011年度の医科診療医療費は1兆7894億円に上り、全体の6.43%を占めている。さらに、重い後遺症が残る場合があり、再発率も高いなど、医療・介護の両面で重い負担が掛かっている。

対策としては、脳卒中の約7割を占める脳梗塞の場合、血栓を溶かす薬を投与する「t―PA療法」を発症後4時間半以内に行うことで、症状が大きく改善する確率が高くなる。しかし、現状では患者全体の5%未満しか同療法が用いられていないという。また、脳卒中の予防には、生活習慣を改善し、主要な危険因子である高血圧を防ぐなどの取り組みも欠かせない。

こうした状況を受け、自公両党は13年12月に「脳卒中対策を考える議員の会」を設立し、公明党からは桝屋敬悟衆院議員が会長代行に就任。医療関係者や患者など14団体からなる「脳卒中対策立法化推進協議会」が作成した要綱案を基に、今回の法案をまとめた。

法案では、居住地に関係なく迅速な救急搬送や治療、リハビリ、福祉サービスを総合的に提供できる体制づくりを掲げた。併せて、▽予防の推進▽専門医療機関の整備▽消防や医療など関係機関相互の連携協力体制の整備▽人材の育成―などの実施を求めている。

国に対しては、脳卒中対策推進基本計画の策定を義務付け、策定の際は、関係者でつくる全国脳卒中対策推進協議会の意見を聞くよう定めた。都道府県については、対策推進計画の策定を義務付ける一方、協議会の設置は努力義務とした。

公明党はこれまで、05年にt―PA療法の健康保険適用を実現するなど、脳卒中対策に一貫して取り組んできた。法案提出者の一人である公明党の秋野公造参院議員は「正しい知識の普及・啓発や連携体制の強化、省庁横断的な施策の推進によって、対策の実効性を高めたい」と語っている。
基本法の早期制定を

脳卒中経験者らが語る

脳卒中対策基本法案の参院提出を受け、脳卒中の患者らでつくる「NPO法人・全国脳卒中者友の会連合会」と「脳卒中から助かる会」の代表に、法案の意義や成立への期待、今後の課題などを語ってもらった。

医療体制の整備が重要
患者側に立つ公明党に期待

石川敏一氏 全国脳卒中者友の会連合会は、患者としての立場から、脳卒中対策立法化推進協議会の一員に加わっています。私たち患者は、この病気の恐ろしさを体験した者として、家族や友人など大切な人を脳卒中から守りたいという思いから、法律の要綱案作成に携わってきました。

政時幸生氏 脳卒中の方が、がんよりも入院患者が多い実態もあります。

石川 脳卒中は、誰が、いつ、どこで発症するか分かりません。発症したら、いい病院ですぐに治療を受けられる体制を、法律によって全国的に整備する必要があります。また、医療と介護の連携も重要です。

米澤弘行氏 どこの病院に搬送されるかというのは大きな問題です。脳卒中はリハビリを早く始めた方が良いのですが、私が発症した時は、入院した病院が半年間リハビリを行いませんでした。結局、他の病院に移り、そこでのリハビリで歩けるようになりました。

政時 私の場合は病院が熱心にリハビリをしてくれました。当初、医師からは「車いすが手放せなくなる」と言われましたが、階段の上り下りなどの訓練を頻繁に行い、歩けるようになりました。今も左半身まひの状態ですが、非常勤で働いています。ネクタイも片手で結べますよ。

上野正氏 法案では、救急搬送や医療の体制整備を進めるよう定めています。その上で、24時間体制で治療を受けられる専門医療機関の整備と、各医療機関の設備や人員、治療実績などの情報を公開する仕組みがあれば、より対策が進むと私たちは考えています。ぜひ推進をお願いしたい。

沼里ゆり子さん 私は患者ではありませんが、「助かる会」の手伝いをしています。そこで患者の皆さんの体験を聞いていましたが、ある時、主人の片方の足音が普段とは異なっており、「しびれている」と言うので、すぐ病院に行ったことがありました。すると、脳梗塞が4カ所も見つかったのです。幸い、大事に至る前に治療できました。

最近はテレビでも、脳卒中の前兆について取り上げています。啓発は確かに大切ですが、英国では治療体制を整備し、それから啓発を行うことで成果を挙げています。日本でも、まずは体制の整備に力を入れてほしいと思います。

上野 併せて、法律の運用の際にも、患者の声が反映されることが大事です。法案では、患者など関係者20人以内で構成する対策推進協議会の設置が盛り込まれています。この仕組みを今後、どう活用するかが重要になるでしょう。

石川 どこまでも患者側に視点を置いた対策が必要だと思います。その意味で私たちは公明党の存在に期待しています。大衆福祉の党である公明党が、患者の立場に立った、きめ細かい対策に取り組むことを望んでいます。

出 席 者
全国脳卒中者友の会連合会
理事長 石川 敏一氏
理 事 政時 幸生氏
監 事 米澤 弘行氏
脳卒中から助かる会
代 表 上野 正氏
(友の会連合会顧問)
事務局 沼里 ゆり子さん

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ