eミレニアム開発目標

  • 2014.07.14
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月12日(土)付



このままでは達成は困難
最貧国支援を重点的に強化せよ



「貧困半減」など数値を掲げて開発途上国の支援をめざす国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、2015年末の期限まで1年半を切り、重大な時期に差し掛かってきた。7日に発表したMDGs年次報告書は、飢餓人口の半減など達成可能な分野が増えたことが明らかになったが、課題も少なくない。

MDGsは、貧困・飢餓の撲滅、初等教育の普及、乳幼児や妊産婦の死亡率低下など8分野からなり、1990年を基準年に具体的な数値を盛り込んだ21項目の目標が設定されている。

当初は、国際社会の取り組みが緩慢なため、大半の途上国で目標達成は困難と指摘されていたが、前進している項目もある。

報告書によると、目標の一つである1日1.25ドル未満で暮らす貧困層の割合半減は既に成し遂げ、飢餓に苦しむ人々を少なくする目標の到達は射程内に入ってきた。マラリアや結核などの伝染病の感染を減らす取り組みも実現する見通しだ。乳幼児死亡率も過去20年間で、ほぼ半減している。

ただ、その内実を見ると必ずしも楽観視できない。例えば、貧困半減は、中国やインドなど新興国の成長が全体の数値を押し上げただけに過ぎない。サハラ以南のアフリカ地域は掲げた数値に届くのが絶望的と見られている。

また、妊産婦の死亡率を4分の1に減らす目標の実現は、かなり困難視されている。全ての子どもたちの初等教育の全課程を修了させる目標も普及地域が限定され、紛争地を中心に5800万人が教育を受けられていない。

目標達成が難しい最大の要因は、取り組みの恩恵が開発途上国に平等に行き渡っていないためである。報告書は各国の政府開発援助(ODA)の総額が過去最高水準に達していながらも、最貧国への援助が減少傾向にあると指摘している。日本を含め先進諸国は、最貧国への支援を重点的に強化してほしい。

貧困・飢餓の撲滅など開発途上国の発展は国際社会の平和や安定と無関係ではない。また、世界の最貧困層が中所得層に変わっていけば、先進国の経済成長にも貢献するだろう。

MDGsの達成は、国際社会の総意であるはずだ。国連ではMDGs後の新たな開発目標をめぐる議論が活発化しており、「目標の達成は再来年以降の開発の礎にもなる」(潘基文事務総長)と指摘されている。人道支援の強化に、日本がリーダーシップを発揮していきたい。

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