e農山漁村活性化 自然資源と人材活用がカギ
- 2014.07.16
- 情勢/解説
公明新聞:2014年7月16日(水)付
地域のやる気引き出す支援加速を
これまであまり注目されてこなかった"村"の宝を発掘し、全国に発信する試みを農水省が進めている。
この「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」プロジェクトは、地域活性化に取り組んでいる各地の優良事例を選定し、全国にその魅力と取り組みを紹介することで、地方の元気を引き出していこうというものだ。今年1月に有識者懇談会が発足し、これまでに23地域が選定された。
高齢化と人口減少に悩む地方にとって、活気ある地域づくりは喫緊の課題だ。豊かな自然資源を生かしきれずに仕事や所得が減り、都市への人口流出が止まらない地域は多い。選定された各地域の取り組みは、そうした課題解決への大きなヒントとなろう。
大阪から電車やバスを乗り継ぎ4時間以上かかる和歌山県那智勝浦町の色川地域は、1991年から農業体験などを通じて地域の豊かな自然や有機農業の魅力を知ってもらい、定住促進につなげてきた。世話人がきめ細かく面倒を見る仕組みも功を奏して、今では同地域世帯の約4分の1、人口の約3分の1が新規定住者が占めるという。
山口県萩市の食品協同組合は、市場にほとんど流通しない"雑魚"を活用し、オイル漬けや魚の生ハムといった「他所にない」加工食品を開発。首都圏にも販路を拡大し、国際会議で食材が使われるなど好評だ。
優良事例に共通するのは、「やる気ある人材」の活躍とその育成・確保だ。三重県多気町には、ほぼ口コミだけで年間6万人が訪れる農村レストランと体験工房・加工施設がある。地域の魅力を広めたいと願う女性が中心となり、地元食材の加工・販売を行い地産地消と食育に役立つ活動が好評だ。20歳代から80歳代と幅広い世代が働く現場も、魅力の一つだという。
東京都板橋区の商店街は、年間を通じて全国16地域の農産品を販売する取り組みに加え、生産者と消費者が相互交流を深めることで新たなニーズの掘り起こしや食育、人材育成につなげる試みが高く評価された。
政府は、「地域資源で稼ぐ地域社会の実現」をめざし、大規模な農業構造改革を進めるが、こうしたきめ細かな取り組みも地域再興には欠かせまい。その原動力は、地域の人々の「やる気」だろう。それを引き出すために、優良事例のさらなる全国展開も考えてはどうか。
国と地方自治体との一層の連携強化で、さらに地域振興を加速化したい。