e安保法制の整備 識者の評価

  • 2014.07.23
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年7月23日(水)付



新3要件の確実な実行を
公明 曖昧運用許さぬ歯止め役に



拓殖大学海外事情研究所長・教授
川上 高司氏

―今回の閣議決定、それに続く衆参両院の予算委員会集中審議をどう見ましたか。

閣議決定について、内閣法制局長官らが国会で答弁している通り、今回の解釈はギリギリのところであり、これ以上、武力の行使を拡大するには憲法改正が必要だ。

下手に、憲法の条文に触れず解釈だけ変えていくと、文民統制(シビリアンコントロール)が維持できなくなってしまう。

―閣議決定では新3要件など自衛権の発動に厳しい歯止めがかけられています。

公明党は与党協議などを通じて、武力の行使を自制し、イラク戦争のような戦闘に自衛隊が巻き込まれることのないよう、しっかり歯止めを主張してきた。このことが、新3要件として反映されたのだと思う。

複雑で困難な状況の中、党として最大限に努力し、最終的な文言に至るまで合意形成に尽くした。

今後の焦点は新3要件が確実に実行されるかどうかだ。自衛権の行使に厳しく明確な基準が設けられたが、最終的には時の首相がその行使の是非を判断する。基準が曖昧に運用されないよう、いかにチェックし、歯止めをかけるか。最後の政治判断レベルでの歯止めとしての期待が公明党に集まっている。これが、これからの公明党の大きな役割だ。

それから、今後は閣議決定を受けた個別法が整備される。新たに法律を作る、改正する局面での公明党の役割も非常に大きい。

―日米関係への影響をどう見ますか。

米国の影響力は相対的に低下しており、オバマ政権は軍事費の削減に動いている。にもかかわらず、東アジア情勢は厳しさを増すばかりだ。わが国の専守防衛は「自国を守る」イコール「自国が攻撃された場合のみ対処する」という考え方だったが、自国を守るためには、従来の幅を超えざるを得ないような状況に直面している。これまでの専守防衛の解釈では、もはや国の防衛が困難となりつつあり、時代や情勢に合った現実的な対応が必要になる。その意味でも今回の閣議決定は評価できる。

今回の決定について、米国の7~8割は肯定的な意見だ。日米同盟も強化される。例えば、朝鮮有事などを想定した自衛隊と米軍艦船との軍事情報のネットワーク化はより進むだろう。

―ホルムズ海峡での機雷除去が話題になっていますが。

今の国際情勢から見て実現性はかなり低い。イランが米国の敵国であるなら話は別だが、イラク情勢をめぐって米国とイランは共同作戦を取っている。

イランが機雷をまく可能性は低いが、もしそのような事態が生じれば、海上自衛隊掃海艇への護衛艦による援護か米艦隊による援護が必要となるであろう。

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