e災害時の民間船活用 被災者支える重要な手段
- 2014.07.24
- 情勢/解説
公明新聞:2014年7月23日(水)付
実効性ある運用体制の構築を
国土交通省は、大規模災害時に民間船舶を円滑に活用するための検討会をスタートさせた。海運事業者の具体的な対応策や、自治体が活用する場合の実務手順など、効率的な運用方法を話し合う。
想定されている南海トラフ巨大地震などで船舶活用に対する期待は大きい。万全な体制づくりを急いでほしい。
大型船は陸上交通路が寸断された場合に重要な輸送手段となる。水や食料、燃料など独立したライフライン(生活基盤)を持ち、被災者の生活を支える機能もある。東日本大震災では、発生約1カ月後に大型客船「ふじ丸」が岩手県の大船渡港や釜石港、宮古港に停泊し、被災者に入浴や食事をはじめ、客室、携帯電話の充電などを無償で提供した。7日間で延べ約4500人が利用している。
しかし、災害時の船舶活用に対する認知度は低い上に、活用には課題も少なくない。
例えば、民間船は大きさや設備が多様で着岸できる港が限られる。実際、東日本大震災では手配に手間取った。災害時、迅速に被災地に向かえる船の確保策が必要だ。
国交省は今年度、船を効率的な支援活動に振り向けるための新たなデータベースをつくることを決めた。船舶の設備や輸送能力といった基礎情報と、各地の港湾に関する情報を一体的に処理するシステムの構築をめざす。
ただ、物理的に活用可能な民間船があっても、海運事業者が日常業務から離れて災害対応に当たるには、荷主や予約済みの旅客との調整に時間がかかるケースが多い。災害の規模にもよるが、どれだけの船を迅速に割くことができるのか、あらかじめ判断することは難しい。
検討会では、海運事業者が必要な船を確保できるよう、通常運航の便数抑制や配船の工夫、事業者間での輪番制などを議論していく。事業者の意見を十分に聞いて、通常業務への影響にも配慮した実効性のある対応策を考えてもらいたい。
また、被災した自治体側が船舶を受け入れるための実務手順を知らないことも課題の一つとして指摘されている。今後、実務手順の円滑化に向けて、自治体向けのマニュアル例も策定していく。他の自治体でも活用できるよう検討を進めてほしい。
国の防災基本計画には、輸送以外の船舶の活用方法が明確に位置付けられていない。被災者の一時避難所など、船舶はいざという時に幅広く活用できる。防災基本計画に船舶の活用を盛り込むべきだ。