e年金、身近に感じて
- 2014.07.29
- 情勢/経済
公明新聞:2014年7月29日(火)付
高校・大学で出張セミナーが好評
機構職員が講師役 納付率向上へ理解促す
国民年金保険料の納付率向上や無年金・低年金の防止に向けて、特に、若者への啓発活動の強化が求められている。そこで、日本年金機構が全国各地の高校や大学などで実施し、成果を挙げている出張年金セミナーの取り組みを追った。
受講した生徒「20歳で加入、初めて知った」
「65歳を過ぎると、生活に必要なお金は1人当たり年間131万円。夫婦2人で20年暮らすなら、総額5000万円以上です」
7月中旬、岐阜県高山市の私立高山西高校では、1年生のクラスで、日本年金機構高山年金事務所が主催するセミナーが行われた。講師を務める機構職員の水藤実さんは、こうした例を引きながら年金の必要性を力説。併せて「年金は世代間の支え合いで成り立っている」「老齢、障害、遺族の3種類がある」などの特徴を説明した。
同機構は2012年度から、各都道府県で行う「地域年金展開事業」として教育機関に出向き、「出前授業」や「年金セミナー」を実施。13年3月から今年2月までの1年間では、全国で延べ1398回開催し、10万人以上が受講した。
このうち高校では、就職や進学を控えた3年の3学期に行うケースが多いという。
実務に携わる職員が講師を務めることもあり、効果は高い。受講後のアンケートでは年金のイメージが一変。「たいへん良い」「まあ良い」と答えた割合は、高校生が受講前の33.2%から75.2%に大幅アップ。大学・専門学校生も25.0%から69.6%に上昇した。
「生徒にとって年金は"遠い世界の話"。セミナーを通して身近に感じてほしい」と、高山西高校の山本大輔教務主任は指摘する。年金は教科書で十分に説明されているとはいえず、生徒が制度を知る機会はほとんどない。受講前のイメージがあまり良くない背景には、こうした実情もある。
このため高山年金事務所では、機構本部が作製した啓発用パンフレットをさらに簡略化した、独自の資料を活用。年金について話し合う男女2人の意見を紹介し、どちらが正しいかを生徒に選んでもらいながら、理解を促している。
同事務所の野中勝之副所長は、「伝えたい話を全て伝えられるわけではないので、『何かあれば年金事務所に相談を』ということも併せて訴えている」と説明する。
セミナー終了後、生徒らは「20歳になったら国民年金に加入することを初めて知った」「年を取っていなくても、障害年金を受け取れることが分かった」などの感想を寄せていた。
好評を博している半面、実施には課題もある。セミナーは、各地域で機構側が関係教育機関と交渉し、協力を得て開催しているが、都市部では地方に比べて、協力を得られにくい傾向にある。また、正規の教育課程にないために、開催を断る学校もあるという。
こうした実情を受け、5月29日の参院厚生労働委員会で公明党の長沢広明氏は、厚労省に対し、自治体や学校に働き掛けるなどして、セミナーの開催を支援するよう提案。政府側から「関係機関への協力依頼などにしっかり取り組む」との答弁を引き出した。
長沢氏は「出張セミナーは意識啓発の上で有効な手法の一つだ。各地域で着実に実施されるように、今後も関係機関の連携を後押ししていく」と話している。