e「専守防衛」堅持し不安払拭
- 2014.08.04
- 情勢/社会
公明新聞:2014年8月2日(土)付
安保法制識者に聞く
公明 現実見据えた合意形成に貢献
――閣議決定、その後の衆参両院の予算委員会の集中審議をどう見ていますか。
安全保障環境の変化にしっかり向き合い、その議論を基に閣議決定した内容であり、基本的には歓迎している。
公明党が「専守防衛の堅持」「平和主義」を重視して慎重な立場を取り、その方針を閣議決定に反映させたことは、周辺国の不安を払拭する上では、良い方向に働いた。同時に、かつてのように野党が原理的に反対することもなかった。極論や感情論を排して、現実的な政策の中でバランスを取り、合意を形成することが、機能する民主主義に必要なことだ。公明党は、与党協議と国会審議において、議論を深めることに貢献したと考える。
――閣議決定では「専守防衛の堅持」などが明示されました。
非常に重要だ。日本が専守防衛を超えて他国を先制攻撃することなどは、誰も望まず、想定もしていない。そもそも、日本にはその実力もない。日本が海外のどこにでも米国の戦争に付き合うという考えも、極端な拡大解釈であり完全な誤解だ。
また、個別的自衛権だから専守防衛で、集団的自衛権だから専守防衛ではないという考えも誤りだ。二つの自衛権にはそれぞれ幅があり、むしろ、専守防衛の範囲内に自衛権の行使をとどめるという閣議決定の考え方は、理屈として通っている。
――日米関係への影響は。
今回の決定を受けて、年内に再改定される日米安保ガイドラインでは、日米間で協力できる幅が広がるだろう。私が見るところ、自衛隊が武力を使うケースというよりは、米軍への後方支援などで、日本が今まで過度に控えてきた行動が取れるようになることが大きな要素だと思う。
具体的には、朝鮮半島で有事が起きた際、米国や韓国の軍隊は防衛や治安維持のために作戦を行う。日本がその地で一緒に軍隊として行動することは考えられないが、米軍への補給などの後方支援は新3要件に当てはまれば、あり得るだろう。誤解してはいけないのは、日本は、新3要件に当てはまるからといって、自動的に行うのではなく、その都度政策的に検討することになる。ただ、こうした備えを十分にすることで地域の脅威に対する抑止効果が上がる。
その意味で、今後、整備が検討される個別法で、あらゆる事態に隙間なく対応できるようあらかじめ準備しておくことが重要である。それによって、自衛隊の行動が法律で規定され、不必要な武力行使の歯止めともなる。
――公明党の役割をどう見ますか。
安倍首相は内外にナショナリストというイメージが強い。公明党には、安全保障の重要な概念である「リアシュアランス」の役割を期待している。これは安心を与えるという意味だ。周辺国に与える不安や誤解を取り除く役割を担ってほしい。
特に、中国側とのコミュニケーションチャンネルは一刻も早くつくる必要がある。この点、北側一雄副代表が衆院予算委員会で、日中間の信頼醸成のためのシステム整備を訴えたことは、大変に重要な提案だ。日中の喫緊の課題は、偶発の事故から紛争にエスカレートすることを未然に防ぐこと。公明党への期待は大きい。