eエボラ出血熱 万全の対策で無用な混乱防げ
- 2014.08.08
- 情勢/解説
公明新聞:2014年8月8日(金)付
エボラ出血熱が西アフリカを恐怖に陥れている。
世界保健機関(WHO)は、リベリアなど4カ国の合計患者が1700人を上回り、死者は900人を超えたと発表した。過去最悪ペースの感染拡大だ。潜伏期間は2~20日間と幅があり、発熱や筋肉痛といったインフルエンザに似た症状を経て最悪の場合は死に至る。治療薬は開発されておらず、対症療法のみだ。
事態悪化を受け、リベリア政府は90日間の非常事態を宣言。WHOも緊急会合を開催し、緊急事態を宣言するかどうかの検討に入った。
リベリアで患者の支援に当たっていた米国人らが感染、米国内の病院に搬送された。感染者が運び込まれたことで、米国内のまん延を懸念する声も少なくない。エボラ出血熱が題材のパニック映画の影響もあるのだろうが、不安は先進国でも広がっている。
万一の国内感染を防ぐために、日本政府も防疫態勢の強化に入った。国内の各空港は水際対策として、体温を画像で計測する装置を使って発熱者の確認を実施している。感染が疑われる人が出た場合、患者は国指定の「特定感染症指定医療機関」に直ちに搬送される。
外務省が出血熱の発生で、西アフリカへの渡航の自粛を呼びかけたことが奏功し、日本人の渡航者の感染は現時点では確認されていない。しかし、感染者を出さないためには万全の対策が重要だ。
WHOによると、エボラ出血熱は患者の体液や血液を素手で触れる「濃厚接触」で感染する。感染しても対症療法で「抗体(免疫体)が検出されるようになると急速に回復に向かう」(国立感染症研究所)。
現地住民の支援を行う国連児童基金(ユニセフ)も強調するように、恐怖心や誤解の払拭が感染阻止の第一歩になる。現地では風評が広がり、助かる見込みがあっても治療できない患者も多いそうだ。
恐ろしい感染症であるのは間違いないが、正しい知識を持ち適切に対処すれば、感染拡大を封じ込めることが可能な病いである。
日本でも無用な混乱を引き起こす風評は起こり得る。政府が率先して正しい感染症の知識を提供すべきだ。