e女性の社会進出

  • 2014.08.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年8月19日(火)付



多様な働き方促す雇用制度に



性別ではなく、能力を評価するのが世界の流れだ。女性の活躍は、社会に有形無形の新たな付加価値をもたらす。

政府が積極的な女性の就労促進策を実施する中で、米国の議会調査局が公表した報告書が注目されている。日本における女性の社会進出を分析した報告書で、上下両院議員が政策立案の基礎的な資料にする。女性の就労を促す点で多くの示唆を含むが、日本の人権感覚について誤解を招くような部分もみられる。

報告書は女性の活躍で経済活性化を促す政策に触れ、2020年までに各分野で指導的な地位に占める女性割合を、現在の10%から30%へと引き上げる目標を評価する。

ただ、女性軽視の社会的な風潮や、長時間労働を良しとする企業文化の弊害を懸念する。都議会での女性の尊厳を傷つける議員の不規則発言が報告書にも影を落とし、日本の政治全体が女性の登用に後ろ向きと捉えられたようだ。

報告書は女性の就労が進まない要因として、保育所など育児支援を担う人材が不足している点も言及。解消策として移民規制を緩和し、外国人労働者の活用を提案する。環太平洋連携協定(TPP)で、移民受け入れの自由化を求める米政府の本音がうかがえる部分だろう。待機児童の解消は急務である。だが、移民規制は政府内で議論中の不法就労者対策などとセットで慎重に議論すべきテーマだ。

職場での女性差別を禁じた男女雇用機会均等法のように、女性の就労を後押しする国内の政策は着実に増えているが、雇用者総数に占める女性割合は、いまだに5割を切っている。女性の社会進出が、先進国で最も遅れているのも事実である。

日本で女性の社会進出が進まないのは、報告書が指摘するような男女差別の意識から生じているというより、社会構造的な要因の方が大きい。現在、女性の社会進出を促す観点から、専業主婦やパート勤務の妻がいる世帯の税負担を軽くする配偶者控除の在り方の検討が進んでいる。こうした議論と並行して、多様な働き方を促す雇用制度への改善も必要である。

世界で最も女性が活躍する社会の構築を急ぎ、人権感覚への誤解を解くべきだ。

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