e広島で大規模土砂崩れ
- 2014.08.21
- 情勢/気象
公明新聞:2014年8月21日(木)付
豪雨36人死亡、7人不明
男児ら、救助中の消防隊員も
広島市内で20日未明、局地的豪雨による土砂崩れが相次ぎ、2~11歳の男児3人を含む計36人が死亡、7人が行方不明になった(同日午後9時現在)。土砂崩れは複数箇所で発生。不明者の多くは生き埋めになっているとみられ、広島県警や消防などが救助を続けた。
豪雨により、気象庁は同日午前1時15分に土砂災害警戒情報を発表。しかし、市が最初に避難勧告を出したのは、土砂崩れの通報から約1時間後の同4時20分ごろだった。勧告の遅れが被害を拡大させた可能性があり、市は対応を検証する。
県警などによると、亡くなったのは、同市安佐南区山本、小学5年平野遥大君(11)と弟の都翔ちゃん(2)、畑中和希ちゃん(3)=同市安佐北区可部東=、無職沢本範子さん(77)=同市安佐南区緑井=、同市都市交通部長の竹内重喜さん(54)=同=ら。また、安佐北消防署の消防司令補、政岡則義さん(53)=同区毘沙門台=が救助活動中に死亡。畑中和希ちゃんを抱きかかえて避難させようとした際、崩れた土砂に巻き込まれたという。
市などによると、被害が集中した安佐南区では、広範囲で土石流が発生、倒壊した家屋や、押し流された車が道をふさぐなどしているという。市は市内の体育館など24カ所に避難所を開設。家を失うなどした市民が避難した。
災害を受け、広島県は自衛隊に派遣を要請。防衛省は隊員約500人を派遣した。また、警察庁は同日午前、災害情報連絡室を設置し、広域緊急援助隊などの派遣を指示した。
公明、被災現場に急行 斉藤幹事長代行ら
「午前3時ごろ、悲鳴とガラスが割れる音で目が覚めた。外を見ると止めておいた車がなくなり、目の前の家も流されていた」(広島市安佐南区緑井の山本英雄さん=34)―。
広島市で局地的豪雨による大規模土砂災害が発生した20日、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行(広島県本部代表)は、同市安佐南区の現場に急行し、被害状況を調査した。公明党の栗原俊二県議、碓氷芳雄市議が同行した。安達千代美、西田浩の両市議も、被災現場で住民を激励して回った。
一行は安佐南区八木地区を視察。同地区の県営住宅に住む新田利勝さん(65)、秀子さん(64)夫妻は土砂崩れによる大木で玄関がふさがれ、住居内に閉じ込められた。消防隊員に救出された現場に立ち会った斉藤氏らが新田さん夫妻を激励すると、同夫妻は「怖かった。外に出られてほっとしました」と話していた。
また、一行は同区長束西地区を訪れ、市道が冠水した現場を調査。同地区4丁目に住む平田富樹さん(62)は「60年以上住んでいるが、こんなことは初めて。一日も早い復旧に取り組んでほしい」と訴えた。一行はこのほか、安佐南区山本地区の被災現場を訪れ、被災者らを励ました。
調査後、斉藤氏は、「人命救助に全力を挙げる。その上で、住民が一日も早く元の生活に戻れるよう、大量の土砂やがれきを除去しなければならない。国、県、市の公明議員が連携し、復旧・復興に取り組んでいく」と語った。
局地的豪雨と長雨複合か
広島 平地少なく崩れやすい地質
広島市で相次いだ土砂崩れについて、国土交通省国土技術政策総合研究所の国友優・土砂災害研究室長は、「狭い範囲に豪雨が降ったことに加え、台風などの長雨も影響したのではないか」との見方を示した。
広島市上空には当時、雨雲が狭い範囲に次々に流れ込む「線状降水帯」が発生した。
国友室長は「これほど雨量があると、表層の土が雨水を吸って崩れやすくなる」と指摘した。
一方、8月に入って台風11号などの大雨が続き、土中に通常より多い地下水がたまっていたとみられる。少ない雨で土砂災害が起きやすくなっていた可能性がある。
広島県によると、県内には花こう岩が風化し、水を吸うと崩れやすくなる「まさ土」と呼ばれる地質が広がっている。平地が少なく宅地開発が山裾まで進んでおり、土砂災害の危険箇所は全国で最も多い3万1987カ所に上る。
県内では1999年6月にも大雨による土砂崩れなどが相次ぎ、死者31人、行方不明1人が出た。
積乱雲が連続発生
広島市に土砂災害をもたらした集中豪雨について、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)予報研究部の津口裕茂研究官は「南から暖かく湿った空気が四国と九州の間の豊後水道を通って広島市付近に直接流入し続けた。山の地形の影響もあって積乱雲が連続的に発生し、線状の降水帯が20日午前1時ごろから5時ごろまで停滞した」との見方を示した。
気象庁の観測点がある広島市安佐北区三入では、降り始めの19日午前11時からの24時間雨量が243.0ミリに上った。雨のピークが避難しにくい午前3時前後だったため、被害が大きくなったと考えられるという。
日本海では朝鮮半島南端から北海道にかけて前線が延びる一方、日本列島の南東海上には太平洋高気圧が停滞。このため南から暖かく湿った空気が高気圧の縁を時計回りに回って九州・中国付近を通り、日本海の前線に向かったが、特に豊後水道から広島市付近に向かう流れが強かった。
この湿った空気は広島市付近の山の斜面に当たって積乱雲が次々に発生し、大雨を降らせたとみられる。
広島地方気象台が激しい雨や土砂災害などに警戒を呼び掛ける気象情報を発表したのは、19日午後10時半ごろだった。津口研究官は「今の観測網やコンピューター解析技術では、今回の集中豪雨を半日以上前から予測することは難しい」と話した。
被災者の救助、救援に全力挙げる
太田国交相
太田昭宏国土交通相(公明党)は20日、千葉県市川市で記者団の質問に答え、広島市の土砂災害に関し、国交省として関係省庁と連携して、被災者の救助、救援を最優先に、災害対応に全力を挙げていることを報告した。
その上で、中国地方整備局などから緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)を現地に派遣するとともに、21日に現地入りして被災者の救助活動に全力を挙げる考えを示した。