e広島豪雨災害――識者はどう見るか

  • 2014.08.22
  • 情勢/気象

公明新聞:2014年8月22日(金)付



勧告待たず、自ら行動を



土砂災害警戒区域指定へ環境整備早期に

群馬大学大学院教授 片田敏孝氏

今回、広島市の避難勧告は結果的に遅かったが、これほどの豪雨でも予測できなかった事実を受け止めるべきだ。気圧配置のわずかな変化で降雨状況は大きく変わる。正確な予測は困難で、避難勧告や避難指示が適切に出せる状況ではない。重要なのは自らの命を守る視点だ。「災害が起こる前に必ず勧告が出る」との考えは捨てた方がよい。

近年、予想を超える豪雨が多発している。要因に温暖化が考えられるが、今後50年、100年と続く傾向にあり、今回のような事態は起こり続けるだろう。

実は、今回と同様の地域で15年前に発生した「広島災害」を契機に、日本の土砂災害行政は大きく変わった。土砂災害防止法が成立し、土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域が指定されるようになった。

ところが、今回は危険を指摘されながらも指定されてない場所で起きた。全国でも、指定がうまく進んでいない地域が存在する。指定には地域住民の合意が必要だが、特別警戒区域になると家を新築できないなど私権が制限されるためだ。土砂災害が起こる場所は地形の特徴から特定できるため、客観的な指標で指定できるよう急ぐべきだ。

土砂災害に備える場合、自分の家が危険だと認識していれば、常に警戒心を持ってほしい。「雨の降り方が尋常ではない」「普段と違う音がするなど」の気付きがあれば、2階に移ったり、近隣の強固な建物に身を寄せるなどの対応が必要だろう。事前に取るべき行動を考える主体性も大切だ。



湿った二つの風が集中



30分以上の豪雨は危険信号

気象予報士・防災士 大野治夫氏

20日未明、前線は日本海上にあり、広島から離れたところにあった。広島の上空3000メートル付近では前線に向かって西南西の湿った風が吹いていた。そこに南からの湿った風が地上付近から乗り上げるような形で、二つの風がぶつかることで上昇気流が起き、雨雲を発達させた。地形の影響もあって、広島に湿った空気が集中して入ってきたことが一番の原因だろう。その上空には、また別に渦を巻く風があり、それが二つの湿った風をせき止めたため、さらに雨雲を発達させてしまったのではないか。

通常、激しい雨が降ったとしても長くて1時間程度で止むことが多いが、今回は雨雲が2時間くらい動かなかった。同じような現象は他の場所でも起きる可能性は十分あり得る。雨雲が動くか動かないかの違いで、災害が発生するかどうかになってしまう。

大体の人は短時間のひどい雨を経験していると思うが、30分以上続いたら「これは危ない」と思った方がいい。雨が続くかどうかがポイントだ。普段から災害時に自分がどう行動するかを想定するとともに、実際に遭遇したら、誰かと連絡を取るなどして身の安全を図ることが大切だ。

今後、行政や気象庁は正しい情報をなるべく早く提供することに磨きを掛けていかねばならない。一方で、自分の命を守るため、自分の地域がどうなっているかを自分で判断することが重要だ。普段から周辺の崖や沢の状況を知っておくことも肝要だ。

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