e広島市の土砂災害 法改正も視野に防災対策急げ

  • 2014.08.22
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年8月22日(金)付



広島県北部で20日未明、局地的に降った猛烈な雨により、広島市安佐北区、安佐南区の30カ所以上で土砂崩れが発生、多くの住宅が巻き込まれ80人を超える死者・行方不明者を出す惨事となった。

亡くなられた方、被害に遭われた皆様に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

広島県は、1999年にも30人を超す犠牲者を出す豪雨被害に見舞われている。これがきっかけとなり、翌年に土砂災害防止法が制定された。同法は、土砂災害の危険性がある「警戒区域」と、住民の生命や建物に著しい危害が生じる恐れのある「特別警戒区域」を指定し、住民への危険周知や避難態勢の整備などの防災対策を進めるものだ。

ところが、今回被害に遭った区域の大半が警戒区域に指定されておらず、15年前の教訓は生かされなかった。政府は、早急に原因を究明するとともに、法律の不備や運用面での問題がなかったかについても検討を加え、必要であれば法改正も含めた抜本的な見直しに着手すべきだ。

高度経済成長期に都市部に人口集中したことから、住宅確保のために山を切り開き宅地造成した地域で、災害が頻発している。3年前の東日本大震災でも、仙台市太白区や青葉区、白石市などで、造成した住宅地で大規模な地滑りが発生している。こうした都市型災害を防ぐため、現在は危険な宅地造成は禁止されているものの、危険な既存造成地は全国に存在している。

7月末時点で、全国の警戒区域は35万4769カ所、特別警戒区域は20万5657カ所に上るが、危険性の高い地域でも今回のように警戒区域に指定されていないところもある。土石流を防ぐ砂防ダムや地盤改良工事といった抜本的な対策には、多くの時間と費用がかかる。まずは、避難態勢の整備が喫緊の課題だ。

災害から住民を守るには、正確な情報提供が最も重要だが、今回は避難勧告が間に合わなかった。猛烈な雷雨で、屋外に設置されている防災無線が聞こえなかったとの指摘もある。警報音を伴う携帯電話の緊急一斉メールなど、多様な情報提供も課題だ。

国民の生命を守るため、国・地方一体のさらなる防災対策の充実を求めたい。

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