e電力融通の司令塔

  • 2014.08.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年8月27日(水)付



電気の過不足調整に指導力を



経済産業省が、電力産業の関係各社で組織する「広域的運営推進機関」について、来年4月1日の設立を認可した。設立の目的は、電力融通を全国規模で実現するためだ。

電力融通は、必要に応じて、発電量に余裕のある電力会社から不足する電力会社へ電気を送る措置である。全国規模での活用が急務だが、電力業界は融通を緊急措置と捉え、長期的かつ大規模な活用を想定してこなかった。

現状の融通措置は、電力会社間の交渉に任されており、仮に交渉が不調だった場合は融通が行われない。2011年3月の東京電力福島第1原発の事故直後、電力融通を円滑に実施できなかったため東電管内で国民生活や産業界に大きな混乱が起きた。

再生可能エネルギー(再エネ)を扱う発電事業者と、大手電力会社間で送電網の利用をめぐる争いもある。大手は火力発電所などに加え、発電網も独占所有する。競合相手の電力を送ることは、自社電力の流通量を減らすことであり大手の抵抗感は強い。

推進機関には、こうした課題を強力な指導力で解消してほしい。夏場や冬場に限らず、通年の電力融通も全国規模で実現すべきだ。精密機器を動かすため、常に一定の電力量の確保が必要な産業界の要望にも応えられる。

原発への依存度が高い関西電力は今夏、不測の事態を防止するために中部電力や中国電力に加え、東京電力からの融通も初めて活用している。全国で電力融通の動きが、活発になるのは間違いない。

ただ、関東と関西では電気の"型"である周波数が異なり、そのままでは電気を使えない。電気を受け取った地域で使うには型の変換が必要だが、変換所は全国に3カ所しかない。今後、周波数の変換所の増設に加え、送電網整備の拡充も急ぐべきだ。

電力融通の安定化は、2020年ごろの完了をめざして政府が3段階で実施する「電力システム改革」の第1弾だ。順次実施していく新規電力会社の参入を促す市場の開放や、再エネの普及策の成否は、融通措置の拡充に伴う環境整備の出来にかかっている。電力融通の基盤を強固にすることは、国民生活や企業活動の安定につながる。

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