e福島原発汚染水 国の責務で対策を確実に前へ
- 2014.08.29
- 情勢/解説
公明新聞:2014年8月29日(金)付
東京電力福島第1原発の汚染水処理が進んでいない。
事故収束と廃炉、さらには住民帰還や福島再生の行方にも直結する問題だけに、看過するわけにはいかない。対策の強化を急ぐ必要がある。
第1原発では、炉心を冷やすための注水が続き、これが高濃度汚染水となって建屋地下にたまり続けている。さらに建屋には、1日約400トンの地下水が流れ込み、これも冷却水と混じって汚染され続けている。
一方、第1原発2、3号機の海側トレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)には、約1万1000トンの高濃度汚染水がたまっており、海洋流出の可能性が指摘されている。
敷地内には37万トン弱にも上る汚染水をためた約1000基の貯蔵タンクもある。タンクの損傷で汚染水がいつ漏れ出さないとも限らない。
こうした事態に東電は、地下水バイパス、多核種除去設備(ALPS)、凍土遮水壁の3本柱からなる対策で汚染水の封じ込めを狙うが、効果はかんばしくない。
地下水バイパスは、建屋の山側にある井戸から地下水をくみ上げて海に流すものだが、当初見込んでいたほどには汚染水は減っていない。そこで東電は、建屋周辺の井戸「サブドレン」からも地下水をくみ上げる方針を公表したが、地元漁業者らの猛反発で宙に浮いている。
汚染水を浄化するALPSの不具合いも続く。稼働率は依然、不安定で低いままだ。
汚染水対策の切り札とされる凍土遮水壁の建設計画も不透明感を増している。前提となるトレンチの凍結・止水作業がうまくいかず、本格工事に進めないためだ。
これら一連の作業は過去に例のないものとはいえ、東電の「失敗続き」は目に余る。原子力規制委員会が「泥縄式対応」と批判するのも当然だ。
無論、国の責任も重い。汚染水対策や廃炉作業を監視・指導する機構がこのほど、政府内に発足したが、遅きに失した観は否めない。
安倍首相は1月の施政方針演説で「国も前面に立つ」と誓ったのではなかったか。その言葉の通り、国のリーダーシップで内外の知見と技術を結集し、汚染水対策を確実に前へと進めてもらいたい。