e地域おこし協力隊 若者の移住に結び付く支援を
- 2014.09.01
- 情勢/解説
公明新聞:2014年8月30日(土)付
都市部の若者らを過疎地の自治体が募集し、地域活動に従事してもらう「地域おこし協力隊」制度が全国に広がっている。隊員数は年々増え、スタートした2009年度は全国で89人だったが、昨年度は約1000人にまで拡大した。安倍晋三首相は6月、この制度の状況を視察した島根県で、隊員数を今後3年間で3000人に増やす方針を打ち出している。
応募者は地方での暮らしや地域貢献を望む人たちが多い。地方では少子高齢化の進行や人口流出が深刻だ。若者の定住促進策の有効な手だての一つとして、受け入れる自治体を増やしていきたい。
協力隊は他地域に暮らす人材を活用した地域活性化策として、総務省が創設した。募集は過疎や離島地域などの自治体が行い、採用されたメンバーは住民票を移して移住地に住む。任期は最長3年で、自治体には募集に必要な経費のほか、隊員1人につき最大400万円の財政支援がある。
活動内容は地域によって異なるが、伝統芸能や祭りの復活、地域ブランドの開発・販売、空き店舗を活用した商店街の活性化、耕作放棄地の再生など多岐にわたる。
総務省が今年公表したアンケート結果によると、昨年6月末までに任期を終えた隊員のうち約6割が、活動していた市町村か近隣地域に定住している。任期後も地元に残ってもらうことは、制度の最終目的でもあるので、この動きを歓迎したい。
一方で、受け入れ地域に定住しない人の中には、活動経験を生かして他地域の市町村で活躍する人もいるが、移住地になじめないまま離れる人もいる。自治体は地元の魅力を十分に伝え、定住に結び付けていく努力を重ねるべきだろう。
例えば、定住支援のコーディネーター(調整役)の配置や、隊員からの生活上の相談などに応じる「ワンストップ窓口」の設置を検討してはどうか。また、周辺自治体とも連携して、隊員同士が問題意識や今後の進路について情報交換したり、話し合える場を設けてもいいのではないか。
自治体は、隊員が無理なく地域に溶け込み、定住の流れが加速するよう、受け入れ態勢を強化してもらいたい。