eNHK国際放送 情報発信力強化へ議論深めよ

  • 2014.09.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年9月5日(金)付



東京五輪・パラリンピックを控え、日本の魅力や考えを国際社会に情報発信する重要性が高まっている。

総務省は「NHK海外情報発信強化に関する検討会」を立ち上げ、外国人向けテレビ番組(NHKワールドTV)を拡充するための実施体制や財源などについて、議論を開始した。

NHKワールドTVは、約150カ国・地域に英語で放映されている。日本人の暮らしぶりや文化、政治や社会の動き、重要な国際問題について日本の立場や見解などを紹介する番組だ。

映像を通して多数の国の視聴者に情報を提供する国際放送が、その国の人々や国際世論に与える影響は軽視できない。具体的には、(1)対日好感度を高める(2)日本に対する偏見や誤解を解く(3)民主主義や自由など日本社会が大切にする価値観や思想を理解してもらう―などの効果を期待できる。

重要な分野だが、日本の現状は欧米主要国に比べると、さまざまな点で見劣りする。例えば、米国CNNテレビや英国BBC放送は、約200カ国・地域で視聴可能だ。フランスやドイツは、英語に加えてスペイン語、アラビア語でも放映している。中国のCCTVは、これを上回る多言語が使用されており、情報発信重視の姿勢がうかがえる。

わが国も、視聴可能エリアを拡大し、多言語放送に踏み切らなければ取り残されていく。

幅広い番組編成にも挑戦してもらいたい。ニュースや報道を中心に、日本の有識者の意見を伝える討論番組、良質な教養・エンターテインメントを加味した企画、日本の国際貢献の最前線に関するリポートなどをさらに増やせないだろうか。

NHKワールドTVの名称を知っている人の割合は、香港やシンガポールで半数前後に及ぶが、米国や英国では1割程度にすぎない。番組の認知度を高める工夫もしてもらいたい。

東京に支局を置く外国報道機関が減っている今、国際放送の果たす役割はますます重みを増す。総務省の検討会は来春、報告を取りまとめる予定で進められるが、実りある議論を期待したい。

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