e若者の自殺 予防教育やネット対策強化を
- 2014.09.09
- 情勢/解説
公明新聞:2014年9月9日(火)付
若い世代が自ら命を絶つケースが後を絶たない。2014年版「自殺対策白書」によると、12年も20~39歳の死因の第1位が自殺であり、統計を開始した06年から7年連続となった。自殺が若者の死因1位を占めるのは先進7カ国では日本だけである。
自殺には、家族も知らないさまざまな要因が複雑に絡み合う場合が多いので、対策は一筋縄ではいかない。しかし、不慮の事故や病気と異なり、社会の努力で一定程度は防止できるはずだ。
まずは、全ての子どもたちに、ストレスへの対処方法を身に付けてもらったり、相談窓口の利用方法などを伝える自殺予防教育を充実させる必要がある。
相談窓口や支援方法を知らない若者に対しては、きめ細かな対策を進めてほしい。例えば、インターネットで検索作業をすると、検索した用語と関連性の高い広告が表示される「リスティング広告」がある。自殺の方法を調べたり、自殺をほのめかす書き込みをした人に対し、この手法を活用して相談窓口を知ってもらう方法は効果的ではなかろうか。
自治体レベルでの取り組みも強化したい。
政府は、自治体の自殺対策事業を支援する「地域自殺対策緊急強化基金」を設け、地域の実情に応じた対策を促している。同基金を活用して、電話相談窓口の充実や自殺未遂者への訪問事業などが進められている。
例えば、ある地域では悩みを抱える10~30代までの若者が集まり、臨床心理士を進行役にして、さまざまなテーマについて本音で語り合える場を提供している。参加者の中には、語り合いの場で仲間ができ、自殺を思いとどまった若者もいたという。
残念なのは同基金の期限が今年度で切れることだ。来年度以降、自治体への財政支援がなくなると、多くの事業が縮小・廃止に追い込まれる恐れがある。
内閣府は15年度予算の概算要求で、同基金に代わる財政措置として、地域における自殺対策を推進するための新規事業費25億円を計上した。自治体が効果的な施策を実施できるよう、確実に財源を確保してもらいたい。