e障がい者への暴力 卑劣な行為の再発を許すな

  • 2014.09.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年9月13日(土)付



卑劣な行為である。



埼玉県で、全盲男性の盲導犬が電車内か駅構内で何者かに傷つけられた事件に続き、同県の特別支援学校に通う全盲の女子生徒が足を蹴られ負傷した。生徒は別の駅構内で点字ブロックの上を白杖で確認しながら歩いていたところを被害に遭っている。杖が折れたりでもしていたら、大けがを負っていたかもしれない。両事件に対し、県警は捜査に乗り出した。

視覚障がい者にとって、盲導犬や白杖は自分の目と同じだ。全日本盲導犬使用者の会など16団体は、盲導犬や聴導犬といった補助犬を傷つける行為への罰則の検討を求める要望書を厚生労働省をはじめ4省庁に提出した。両事件とも視覚障がい者にとって多くの危険が潜む公共交通機関の場で起きた。官民が一体で再発防止策を実施する対応が必要である。

けがをした女子生徒が「怖くて一人で外出できない」と語る姿がテレビで放映されていた。心ない行為が少女の心の傷になっていないか心配だ。盲導犬の使用者らも「事件がトラウマになった」と語っている。一連の事件を知った視覚障がい者たちは「自分も被害に遭うのでは」との不安を募らせていることだろう。

公明党の主張もあって、道路や建物、公共交通機関のバリアフリー化が進んでいる。その政策効果によって、障がい者の社会参加も広がってきた。一連の事件は、こうした動きに水を差すもので、絶対に看過できない。

盲導犬などについて定めた「身体障害者補助犬法」は2002年に成立。公共施設や不特定多数の人が利用する商業施設は、原則として補助犬を伴った入店を拒んではならないことになったが、利用を敬遠する店も少なくない。障がい者も健常者も暮らしやすい環境をめざす"共生社会"の実現は、国民全体の理解がなければ成り立たない。

事件は他者に配慮する余裕を社会が失いつつあることへの警鐘でもあるだろう。健常者と障がい者の交流を促進し、心理的な距離を縮める対策が必要だ。

やり場のない怒りを社会全体で重く受け止め、再発を許さない環境を着実に築いていきたい。

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