e新たな安全保障と公明党 ポイント解説
- 2014.09.16
- 情勢/社会
公明新聞:2014年9月14日(日)付
新しい安全保障法制整備の基本方針を定めた7月1日の閣議決定以来、さまざまな報道がなされています。ここでは、見直しの必要性やポイント、公明党が果たした役割などについて、あらためて解説します。
なぜ見直したのか?
隙間ない防衛法制へ 厳しさ増す安保環境の変化に対応
国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の責任です。ところが、核兵器や弾道ミサイルといった大量破壊兵器の脅威に直面しているほか、領域をめぐる国家間のトラブルやテロ攻撃など、アジア大平洋地域には、いつ日本の安全に重大な影響を及ぼすか分からない問題が存在します。
こうした日本を取り巻く安全保障環境の変化への対応が求められています。公明党は与党として安全保障法制整備の方向性や考え方を明確にする必要があると判断しました。
武力紛争を未然に回避するための外交努力は当然です。しかし、その一方で、国民の命に関わるような「万が一」の事態に対応できるように、隙間のない、しっかりとした安全保障法制を整備する必要があります。「万全の備え」をすることで紛争を予防する力(抑止力)が高まり、日本への攻撃の意図をくじくことができます。また、年内に改定される日米防衛協力のための指針(ガイドライン)によって日米同盟を強化する必要もあります。
熊本県立大学の五百旗頭真理事長(神戸大学名誉教授、前・防衛大学校長)も「安全保障に関し、日本が二度と侵略戦争をしないという戦後日本型の発想では対処できない事態を迎えている」と述べています。
閣議決定の要点は?
自衛の措置の限界示す 他国防衛の集団的自衛権認めず
閣議決定の核心は、憲法第9条下で認められる自衛の措置(武力行使)について「新3要件」【別掲】を定め、政府の恣意的な自衛権発動を封じ込めた点にあります。自衛権に関する政府の憲法解釈の基本となっている、1972年見解の考え方も変わっていません。
72年見解の根幹は、「自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認される」との部分です。
「新3要件」はこの論理を守り、憲法第9条の下で認められる自衛の措置の限界を示しています。
閣議決定には、武力の行使は「我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容される」とあります。あくまで自国防衛に限った措置であることを明確にしたものです。いわば、日本への武力攻撃に匹敵するような事態にのみ武力行使が認められており、外国の防衛それ自体を目的とした、いわゆる集団的自衛権の行使は認めていません。横畠裕介内閣法制局長官も国会答弁で閣議決定について、「(他国防衛の権利として)観念される、いわゆる集団的自衛権の行使を認めるものではない」と明言しています。
公明が果たした役割は?
憲法解釈の基本を守る 専守防衛堅持し、武力行使に歯止め
公明党は一貫して、「政府が長年とってきた憲法解釈を外れてはいけない」「丸ごとの集団的自衛権を認めることは断固反対」と訴えてきました。閣議決定に向けて議論を重ねた与党協議会でも、従来の憲法解釈との論理的な整合性を確保すべきだと強く主張し続けました。
その結果、政府の憲法解釈のベースとなっている1972年の政府見解の基本的な論理は、「憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない」と閣議決定の中に明記されました。万一、閣議決定の内容を超える武力の行使を認めようとするならば、憲法改正しかありません。
さらに公明党は、自衛権発動の「新3要件」について、「他国」の部分に「我が国と密接な関係にある」との文言を加えて限定。条件の核となる部分を、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される「明白な危険がある場合」とし、当初案の「おそれがある」よりも厳格にして武力の行使に歯止めをかけました。
閣議決定文の冒頭部分では、日本が専守防衛に徹してきた戦後の基本方針を確認した上で、平和国家の歩みを「より確固たるものにしなければならない」との意思を示しています。これも、公明党の主張が反映されたものです。
東京財団上席研究員の渡部恒雄氏は、「公明党が『専守防衛の堅持』『平和主義』を重視して慎重な立場を取り、その方針を閣議決定に反映させたことは、周辺国の不安を払拭する上では、良い方向に働いた」と評価しています。
自衛権・自衛隊と憲法9条
戦後69年が経ちましたが、日本は一貫して平和国家の道を歩んできました。この平和主義の根幹を成すのが憲法第9条です。この憲法第9条は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を定めています。
しかし、その一方で「全世界の国民が、平和のうちに生存する権利を有する」との憲法前文と、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、最大の尊重が必要」という憲法第13条の規定を踏まえ、政府は自国防衛のための自衛権(個別的自衛権)は認められると解釈してきました。
陸海空の3自衛隊は、憲法が認める個別的自衛権の行使を担う実力組織であり、「個別的自衛権行使の裏付け」として認められています。
公明党は結党時、自衛隊の国土警備隊への改組や日米安保の段階的解消を掲げていましたが、党内論議を踏まえ、1980年代初頭に日米安保については「一定の抑止的役割を果たしていることは否定できない」として存続を容認しました。
また、自衛隊については「現憲法下において、わが国の平和的存立を守るための自衛権は認められる」とした上で、自衛権の裏付けとして必要な能力を領域保全に限定。「領域保全能力が公明党の合憲とする自衛隊構想」と明確にしました。