e中間貯蔵施設 地元への説明尽くし建設を
- 2014.09.24
- 情勢/解説
公明新聞:2014年9月24日(水)付
東京電力福島第1原発の事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設や汚染土などの搬入に関する検討が政府内で進められている。
政府は、苦渋の決断の末、施設受け入れ容認の意向を示した大熊、双葉両町をはじめ、今も事故の影響に苦しむ福島県民の思いをできるだけ受け止める取り組みを進めてもらいたい。
環境省は18日、有識者の検討会で廃棄物輸送の基本計画案を示し、搬入開始から1年程度は政府主導で試験輸送に取り組む方針を示した。県内全域の仮置き場からの輸送を実際に行い、経由地の放射線量や交通への影響を検証し、本格輸送に向けた改善点を洗い出す考えだ。
現在、仮置き場にある汚染された土や草木などの廃棄物は、周辺地域への帰還の妨げになっている。環境省の推計によると、輸送対象となる廃棄物は、少なく見積もっても1600万立方メートルを超す。3年で搬入を完了させるために必要な大型トラックの台数は、1日当たり2000台と試算されている。絶対に事故は許されないだけに、万全な輸送態勢を敷いてほしい。
廃棄物は県内全域から運ばれるため、主要道路の沿線住民には健康や生活への影響を懸念する声が強い。政府は、衛星利用測位システム(GPS)で輸送車両の状況を把握しながら搬入を行う方針だ。把握した情報の開示と住民が納得できる説明を行い、不安の解消に努めてもらいたい。
中間貯蔵施設の必要性は多くの住民が認めているが、だれも自分が暮らす地域での建設を望んではいない。今も郷土への強い思いを抱く大熊、双葉両町の建設予定地の地権者に対し、政府が誠意を持って交渉に臨むのは当然だが、地権者同士、あるいは地権者と地権者以外の住民の間で顕著な格差が生まれないように、慎重に交渉を進める配慮が必要だ。
福島県などは、廃棄物搬入を始めるための条件として「30年以内の県外最終処分」を定めた法案の成立や、地域振興に使う交付金の予算化や自由度の確保などを挙げている。政府は来年1月の搬入開始をめざしているが、あくまでも住民の理解や納得を大前提に作業を進めてほしい。