e再エネの買取制限 適正価格で需給を安定させよ
- 2014.09.29
- 情勢/解説
公明新聞:2014年9月27日(土)付
「再生可能エネルギー(再エネ)は使えない」との誤認識を与える結果になってはならない。九州電力(九電)が再エネ電力について、固定価格買取制度に基づく新規買い取りを、一般家庭用を除き制限すると発表した。
計画中を含む全太陽光発電が稼働すれば九電管内で必要な電力需要を大幅に上回り、送電設備に過剰な負担が掛かることで、大規模な停電に陥る恐れがあるという。東北電力も買い取り制限の検討に入ったようだ。
天候に発電量が左右されやすい再エネ利用の難しさを露呈したとの声もあるが、問題の本質は制度の運用にあるといえよう。
企業が大規模に太陽光パネルを設置して生産する電力と一般家庭が再エネ発電機器で作る余剰電力は、買取制度に基づき地域の電力会社が買い取る。買い取り価格は毎年度見直すが、その年度ごとの価格は最長で20年間同じだ。
制度を開始した2012年度は普及を促すため、価格は高く設定された。太陽光発電を中心に買い取り申請数は伸びたが、一方で価格の高い時期に申請だけし、その後に太陽光パネルが技術革新などで値下がりするのを待った上で事業化して、利益のかさ上げを狙う悪質な事業者が出た。
再エネ市場をこれから育成する日本では、国が適正価格を設定することが必要だが、高めに設定すると企業参入を過剰に刺激し、必要以上の電力供給に拍車を掛ける。企業に適正な利益をもたらす上でも、再エネ大国のドイツと同様に価格を年に何回か改定することも検討すべきではないだろうか。再エネ電力を余すことなく活用するには、送電網の強化と拡充も必要だ。
東京電力福島第1原発の事故後は、電力供給にあまり余裕がない。場当たり的な買い取り制限は電力供給全体を不安定化し、安定需給と低価格に貢献できる再エネのメリットを失わせかねない。
経済産業省は専門家の会議を設けて制限の現状を調査する方針を示した。再エネの普及に向け「何ができるか、あらゆる角度から検証する」(小渕経産相)ことが必要だ。
発電事業者と消費者の双方に利益が生まれる買取制度へ改善が期待される。