e過度な円安 中小企業への悪影響を防げ
- 2014.10.07
- 情勢/解説
公明新聞:2014年10月7日(火)付
過度な円安を懸念する声が強い。東京外国為替市場で先週、1ドル=110円台まで一時値下がりした。
少資源国の日本は、食料や原材料など多くを海外から購入せざるを得ない。過度な円安は輸入品価格を高騰させ、国民生活に打撃を与える。東京電力福島第1原発の事故後、全国で火力発電所が稼働したことで液化天然ガスの輸入が急増。貿易赤字が拡大しているのはこのためだ。
経済への悪影響は、想像以上である。みずほ銀行産業調査部の推計によると、10円の円安で上場企業は約2兆円の増益だが、中小零細企業など非上場企業は、逆に約1兆3000億円もの"減益"になるという。現在の景気回復を帳消しにする格好になる。
生産拠点の海外移転などで為替変動の影響を吸収できる大企業と違い、中小企業の経営現場は、国内に根ざしている。中小企業の強固な経営基盤があるからこそ、国内雇用の7割以上が守られている点を忘れてはならない。8月以降の円相場は、対ドルで8円近い円安である。中小企業経営者の我慢は限界だ。
為替市場は短期的に巨額の利益を求める投機筋による取引の影響で、相場が大きく変動する場合もあり、企業が望む水準に政府や日本銀行が意図的に導くのは簡単ではない。ただ、めざすべき水準はある。主要な輸出関連企業は、輸出で採算を得られると想定する為替レートを100円程度に設定している。想定為替レートまで近づけることができれば、大企業の利益を維持しつつ、中小企業の負担軽減も可能ではないか。
中小企業への悪影響を防ぐ円安対策を早急に実施しなければならない局面だ。政府が、家計や中小企業の負担が増すような円安は、断固として阻止するとの声明を世界に示すだけでも意味がある。
米国の景気回復が続けば、円安は当面収まらない。長期的な視点として、為替変動に左右されない日本経済の構築も進めるべきだろう。中小企業が力を増す経済対策を実行することは重要だ。中でも、少子高齢化に伴う人手不足の解消は、デフレ脱却と日本全体の産業競争力を高める上でも大切である。将来を展望した経済政策も必要だ。