e忘れられる権利 ネット時代の人権 議論深めよ
- 2014.10.17
- 情勢/解説
公明新聞:2014年10月17日(金)付
インターネット上に残る自分の情報の削除を要求する「忘れられる権利」について、日本社会が対応を迫られる出来事になるかもしれない。
ネットの検索サイトで自分の名前を検索すると、犯罪に関係したかのような記述が表示されるのは人権の侵害だとして、日本人の男性が同サイトの運営会社に検索結果の削除を求めた仮処分申請で、東京地裁が一部削除を命じる決定を出した。忘れられる権利につながる検索結果の削除を認めた司法判断は、国内では初めてとみられる。
ネット社会の進展により、さまざまな情報が容易に入手できるようになった一方で、自分の情報がどのように使用されているか、完全に把握するのは難しい。不利益を被る情報が拡散すれば、自分で全て削除するのは不可能に近い。忘れられる権利は、ネット時代の新たな人権としてクローズアップされている。
欧州連合(EU)では今年5月、EUの最高裁に当たるEU司法裁判所が、忘れられる権利を初めて認める判決を出し注目を集めた。この権利の法制化に向けた議論も進んでいる。
ネット上には国境がないため、ネット情報による人権の侵害に的確に対応するには、国際社会が同じ土俵を整えることが重要である。
例えば、フランス人が人権侵害の情報をネットに流されたとする。フランスでは情報の削除が認められたとしても、同じ内容が日本のサイトに転載されている可能性もある。その場合、日本も同様に削除が認められなければ、人権侵害の情報が残り続ける。これでは問題が解決したとは言い難い。
日本が国際社会と歩調を合わせて人権問題に取り組むためにも、対応を急がなければならない。個人に関わるネット情報の取り扱いについて、議論を深めていくべきだ。
欧州などには、個人情報の取り扱いを監視・監督する第三者機関がある。こうした体制の整備も必要だろう。
大きな課題は、国民の「知る権利」や「表現の自由」とのバランスだ。削除の妥当性を判断するためのルールづくりが欠かせない。
ネット上の人権をどう守るか、検討が急がれている。