e泉南石綿訴訟 救済急ぎ、今後の対策に生かせ

  • 2014.10.24
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年10月24日(金)付



大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場元労働者らが、肺がんなどの健康被害を訴えた訴訟で、政府は近く原告団に謝罪し、和解を申し入れる考えを示している。石綿の危険性を認識しながら、長年、対策を怠った国の責任を認める最高裁判決を受けた判断だ。

旧労働省の調査で石綿の健康被害が判明した1958年から50余年。高齢化が進む原告の中には最高裁の判決を待たずに亡くなった人もいる。政府には、被害者の救済を急いでもらいたい。

泉南石綿訴訟に関し、政府は、大阪高裁に差し戻された一部の訴訟の原告に対しても和解を申し入れ、賠償額は勝訴が確定した原告と同じ基準で算定する方針だ。また、裁判を起こしていない被害者にも、提訴してもらった上で和解し、賠償金を支払う意向を示している。

訴訟の全面解決に向けた政府の姿勢は評価できる。誠意を尽くし、救済を進めてほしい。政府は、最高裁判決を重く受け止め、今後の対策に生かす責任もある。

石綿の製造・使用は2006年に全面禁止されたが、一部に石綿を用いた建築物は今も多く残る。国土交通省は、民間の建築物約280万棟が「石綿使用の有無が未調査」と試算している。建築物の解体工事や、大規模地震の被災地で建築物が倒壊し、石綿が飛散する事例はこれまでも起きている。

石綿を含む建物の老朽化に伴う解体は今後、急増が予想されており、280万棟の調査を進めていく必要がある。また、今年6月施行の改正大気汚染防止法では、自治体による解体工事現場への立ち入り権限が強化され、自治体に積極的な検査の実施が求められている。

公明党は、06年の石綿健康被害救済法成立を推進したほか、泉南石綿訴訟に関しても、原告団らと意見交換を重ね、江田康幸・党アスベスト対策本部長(衆院議員)らが、政府に早期の全面解決を強く主張してきた。

今回の訴訟で政府が全面解決に向けた判断を下したことは一つの大きな節目となるが、引き続き、被害者救済と今後の被害拡大を防ぐ対策を全力で進めていく必要がある。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ