e学校の津波対策 国庫補助の対象地域を広げよ

  • 2014.10.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年10月31日(金)付



子どもや地域住民の命を守る、学校の津波対策を急がなければならない。



東日本大震災規模の巨大津波が起きた場合、全国の公立幼稚園と小・中・高校など約4万校のうち、2860校で浸水が想定されることが28日に公表された文部科学省の調査で明らかになった。このうち、施設面での対策を「検討中」で、十分な安全性が確認されていない学校は約4割の1066校に上る。

巨大地震に伴う津波災害は、いつ、どこで起こるか分からない。学校は、災害時には避難場所として利用され、地域の防災拠点としての役割も担う。津波対策の遅れは、子どもや地域住民の犠牲につながりかねず、看過できない。

文科省は今年7月、学校施設を整備するための指針を改定し、近隣に避難場所がない学校には、校舎の高層化や高台移転などの対応を求めている。

高層化や高台移転は多額の費用を伴うため、自治体には財政面での不安が大きい。

現在、津波対策が目的の学校移転に対する国庫補助は、南海トラフ巨大地震の被害が想定される地域のみが対象だが、文科省は、来年度から全国に広げる考えだ。そのための費用は来年度予算概算要求に盛り込まれているので、政府は、十分な費用を確保して自治体の対策を後押ししてもらいたい。

気掛かりなのは、自治体の間で津波対策に温度差があることだ。南海トラフ巨大地震で大きな津波被害が想定されている静岡や和歌山、徳島の各県などは「対策済み」の割合が高く、それ以外の地域では低い傾向がある。

また、東日本大震災後に政府が都道府県に義務付けた、最大規模の津波を考慮した浸水想定の設定も急がなければならない。学校が現段階で必要な対策を実施していても、浸水が想定される地域が広がれば、追加の対策を求められかねない。これでは学校側はとまどってしまう。

教育委員会の中には、文科省調査の過程で危機感を強め、高台への避難路を整備する計画を前倒しして実施することを決めたところもある。自治体は、改めて防災意識を高め、対策の遅れを解消してほしい。

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