e認知症の国際会議 国内施策の充実につなげよ
- 2014.11.06
- 情勢/解説
公明新聞:2014年11月6日(木)付
認知症対策について議論する国際会議が5日から、東京で開かれている。同会議は、昨年12月にロンドンで初めて行われた主要8カ国(G8)の「認知症サミット」に続く国際会議の一つだ。「認知症のケアと予防」をテーマに、世界保健機関(WHO)や各国の政府関係者、医療従事者らが現状や課題を話し合っている。
認知症患者の増加は日本以外の先進国でも大きな課題となっている。WHOによると、世界の認知症患者(推計)は現在の約3600万人から、2050年には3倍以上の1億1540万人に達する見通しだ。
既に、認知症の進行を抑える薬は開発されているが、根本的な治療法や治療薬は確立されていない。未解明な部分が多い認知症の研究に国際協力は欠かせない。このため、昨年のサミットでは、25年までの治療法確立をめざし、研究費の大幅な増額や研究データの共有で合意した。さらに来年3月をめどに、WHO主催の総括的な保健相会合を開催することも検討されている。
日本政府は各国と知見や経験を幅広く共有し、施策の充実につなげるとともに、認知症対策で主導的な取り組みを示してほしい。
欧米主要国は、国を挙げた対策に乗り出している。英国は09年に「国家認知症戦略」を策定、米国では法律を制定し、国家戦略を発表した。オランダ、フランスも対策を進めている。
日本は国民全体に対する高齢者の割合が参加国の中で最も高い。本来なら世界をリードすべき立場にあるが、欧米に比べ対策はどれほど進んでいるだろうか。
厚生労働省は昨年度から、早期診断と患者・家族の支援に力点を置いた「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を進めているが、同省だけで実施する対策には限界があるだろう。省庁の枠組みを越えた施策の充実が求められる。
政府は今秋、関係府省庁で情報を共有する連絡会議を設置し、連携強化に乗り出した。一定の前進ではあるが、やはり欧米主要国のように、認知症対策を国家戦略として打ち立て、官民を挙げて取り組むべきである。