e中間選挙後の米国
- 2014.11.10
- 情勢/解説
公明新聞:2014年11月8日(土)付
政府と議会の協調で停滞防げ
オバマ米大統領は一段と厳しい政権運営を迫られることになった。
米国の中間選挙では、野党の共和党が上下両院で過半数を制した。今後は大統領と議会が対峙する構図になる。
「チェンジ(変革)」を掲げ、華々しく登場したオバマ大統領だったが、オバマケアと呼ばれる医療保険改革の混乱や国民の実感が乏しい景気回復、エボラ出血熱の感染者が出たことなどが米国民の不満を生み、選挙結果に出た。必ずしも共和党の主張が評価されたわけではなく、オバマ大統領への大きな期待が失望に変わったとの受け止め方が一般的だ。
与野党の対立で政府機関の一部閉鎖につながった議会の混乱に対しても、米国民の視線は厳しい。大統領と議会が全面的に対立すれば「決められない政治」が常態化し、国民の政治不信に拍車をかける。これを機に、不毛な政争は打ち止めにすべきである。
選挙結果を受け、オバマ大統領は「(残り任期の)2年間をできるだけ実り多いものにするため、新しい議会とともに努力することを切望している」と記者会見で述べた。議会の主導権を握る共和党も上院トップのマコネル院内総務が、民主党との対決一辺倒の姿勢を改める考えを示している。
歩み寄りの姿勢は歓迎されるだろう。米国民に広がる所得格差の解消や財政赤字の削減など、山積する課題の解決に向け、双方に責任ある対応を求めたい。
国際的な対応も同様だ。中東地域で勢力を拡大するイスラム過激派組織「イスラム国」の動きや、ウクライナ問題、北朝鮮の核・ミサイル開発など、国際社会に不安定な要素は多い。米国が果たすべき役割は依然として大きい。
自由貿易を推進する共和党が躍進したため、難航している環太平洋連携協定(TPP)の日米交渉は加速するとの見方が出ている。ただ、共和党はより高い水準での自由化を求める声が強く、合意のハードルが高くなる可能性もある。慎重な見極めが必要だ。
今後も、日本外交の基軸は日米関係にあることに変わりはない。米国での政策変更などの動きを注視しながら、両国関係を強化していきたい。