e企業は人事制度の抜本改革を
- 2014.11.11
- 情勢/社会
公明新聞:2014年11月11日(火)付
マタニティー・ハラスメントの最高裁判決
日本女子大学 現代女性キャリア研究所
大沢 真知子 所長
女性が妊娠後に降格されたことを違法と判断した最高裁判決をきっかけに、「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」問題への対応が急がれている。日本女子大学・現代女性キャリア研究所の大沢真知子所長に聞いた。
―マタハラに関する最高裁判決をどう見ますか。
大沢真知子所長 企業側の意識の遅れが指摘された歴史的な判決だと思う。今回の判決を機に企業は人事管理制度を抜本改革する必要がある。
日本の会社は、時間的制約のない(男性)労働者を前提に経営してきた。「子育てで時間的制約がある人は会社に迷惑をかける」という価値観の下で、子育て中の女性は降格させられても仕方がないとの考えからだ。
しかし、今回の判決は、時間的制約を理由に管理職が働き方の変更を求めた場合、降格させることは違法と判断されたわけで、企業の価値観の転換を求める非常に大きな判決となった。
―今国会で女性の社会参加を後押しする「女性の活躍推進法案」が議論されています。
大沢 現在国会で審議されている法案を見ると、目標設定や情報公開の方法などが明示されていない。さまざまな議論はあるが、私は「女性管理職を何年までに何人にする」など、踏み込んだ目標設定が必要だと考える。
実際、女性の活躍を推進している企業は業績を上げている。女性人材を育てようとすると商品やサービスを提供する業務の過程を刷新する、プロセスイノベーション(過程革新)が起きる。男性社員も含めた職場全体の働き方も見直されることになり、その結果、生産性は上がるからだ。このようなイノベーション(職場刷新)を職場に起こすために、法案にある程度強制力をもたせることが必要だ。
―これから必要なことは。
大沢 「女性の活躍推進」と聞いて誤解しないでほしいことは、女性は働かなくてはいけないと言っているのではないこと。選択の自由は尊重すべきだ。ただ、現状は、女性が働きたくても両立環境が整っていないので働けないという現実がある。それを変えることは政治の役目。企業の管理職やマスメディアにも意識改革が求められている。女性も時代の先を読む力を備え、決断力としなやかさを同時に持って生きる必要がある。いま日本は大きな時代の転換点に立ち、変革の時を迎えている。