e日中首脳会談 民衆レベルの信頼回復が重要

  • 2014.11.12
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年11月12日(水)付



日中両国はようやく関係改善のスタート台に立った。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するため中国を訪問している安倍晋三首相は、10日午後、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談した。

日中の関係改善はアジア諸国だけでなく世界の利益につながる。国内総生産(GDP)世界第2位と第3位の国が首脳同士の対話もなく緊張関係が続くという異常な状態に、ようやく終止符が打たれたことを歓迎したい。

会談に先立つ7日には日中関係改善について、(1)戦略的互恵関係の発展(2)歴史を直視し両国関係に影響する政治的困難を克服(3)尖閣諸島など東シナ海の緊張状態について異なる見解を有すると認識し、対話と協議を通じて危機管理メカニズムを構築(4)政治・外交・安保対話を徐々に再開―の4項目からなる合意文書が発表され、両国は互いの主張の相違点を認めながら、対立から互恵へと転換を図ることになった。

ただ、忘れてはならないのは、両国政府の関係悪化が国民レベルにまで及んだことだ。今年9月公表された日本の非営利団体と中国メディアによる日中共同世論調査によると、相手の国に対して「良くない印象を持っている」はともに、9割前後に達している。内閣府がほぼ毎年行っている日本人の主要国に対する親近感調査でも、中国に「親しみを感じない」は45.1%と他国を大きく上回っている。

1970年代の劇的な日中関係改善は、米国と中国にとって、ソ連(当時)という共通の脅威が存在する国際環境の中で実現した。わが国では中国の民衆を見つめた草の根の友好を進める動きもあったが、関係改善の動きは権力政治(パワー・ポリティックス)を超えて、国民レベルに十分届かなかった。

その後、爆発的な中国経済の躍進によって両国の貿易、経済面での相互依存関係は深まったものの、歴史認識や戦争責任をめぐる両国民の認識の溝を埋めることはできないでいる。

両国の政治指導者には、今後、相手国の世論動向を注視し、両国民の共感や信頼感を深める取り組みが期待されている。

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