e公明党の緊急経済対策
- 2014.11.25
- 情勢/社会
公明新聞:2014年11月25日(火)付
公明党は20日、「『経済の好循環』実現に向けた緊急経済対策」を政府に申し入れました。アベノミクスによる企業の収益増を雇用改善や消費の拡大につなげることが目的。主な内容を紹介します。
家計を助け、消費を喚起
中低所得世帯を応援
17日に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値が予想より落ち込み、年率換算で1.6%減と2四半期連続のマイナスになりました。公明党の石井啓一政務調査会長は、「4月の消費税率引き上げ後の個人消費が足踏み状態であり、低所得世帯だけでなく中堅所得世帯まで含めた家計支援が大切だ」と訴えています。
緊急経済対策は中低所得世帯への家計支援として、(1)地元だけで使えるプレミアム商品券の発行支援(2)円安による原油価格の高止まり下でも、厳しい冬を乗り越えるために灯油が欠かせない寒冷地や過疎地などを対象にした灯油の購入補助(3)社会福祉施設のエネルギーコスト負担軽減支援―などを提言しています。
また、消費喚起については、省エネに配慮した住宅の新築やリフォームに対して、商品券などと交換できる「住宅エコポイント」を与える制度の復活や、省エネ家電への支援を盛り込んでいます。
地方創生で経済を活性化
観光振興など地域おこし推進
地方創生の理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」と、活性化に取り組む自治体を国が一体的に支援する「地域再生法改正法」は、地域経済を元気にする「目玉」政策であり、公明党は前国会で成立に全力を挙げました。
人口減少の抑制や東京一極集中の是正をめざす地方創生の理念に沿い、緊急経済対策も地方創生関連の提言を多く盛り込みました。
まず、地方にとって使い勝手の良い交付金の創設を求めています。地域性にあふれた独自の活性化策を財政的な裏付けをもって実現してもらうためです。
観光立国政策が成果を挙げる中、観光資源の豊かな地方が観光案内の多言語対応を強化したり、Wi―Fi整備を促進できるよう支援すべきです。
地域経済の活性化については、日本が世界に誇る先端ロボットなどの革新的技術の開発・普及を支援するよう求めています。技術力で世界と勝負している地方の中小企業を元気づける施策も欠かせません。
燃料価格高騰に支援策
多消費の産業に手厚く
新興国を中心に世界のエネルギー需要は拡大を続けています。同時に、地域紛争や国際的な経済状況が大きく変化する中で、石油などの資源価格は長期的には上昇傾向にあります。このエネルギー価格の高騰は、国民生活や産業界を大きく圧迫しています。
日々の仕事に燃料が欠かせない運送業者や、漁船を使う水産業者、ハウス栽培の農家など、燃料依存度の高い業界に対し、燃料価格高騰への支援策を強化する必要があります。
同時に、エネルギー多消費産業が省エネのために行う設備投資への支援も進めます。
太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)の拡大も重要で、学校の省エネ施設の整備も提言しています。さらに、電力系統用の大型蓄電池の開発普及も進めるべきです。再エネは天候によって出力が変動しやすいため、安定化をもたらす大容量化など性能向上が待たれています。
中小企業に活力を
セーフティネット貸付の強化
日本経済を支える中小企業支援として、資金繰り支援や各種補助金の継続・拡充などを提言しています。
資金繰り支援については、政府系金融機関が運転資金や設備資金を低金利で融資する「セーフティネット貸付」の利率引き下げを訴えています。
補助金では、中小企業が行う試作品・新商品の開発、新しいサービスの導入などに掛かる費用に対する「ものづくり・サービス補助金」と、小規模事業者が商工会・商工会議所と一体となって行うチラシ作成費用や、商談会参加のための運賃など販路開拓に取り組む場合の費用に対する「小規模事業者持続化補助金」の継続・拡充を求めています。
このほか、中小・小規模事業者の海外展開を支援するため、現地にワンストップの相談窓口を設置し、法務・労務などの個別相談や商品企画のアドバイスなどをする海外展開戦略支援の強化も提案しています。
10%上げ延期への対応
子育て新制度の財源確保
消費税率10%への引き上げが来年10月から2017年4月に延期されたことへの対応も重要です。
今年4月の8%実施時から、低所得世帯の家計負担軽減などを目的にして「簡素な給付措置」や「子育て世帯への給付」が行われています。
「簡素な給付措置」は、住民税非課税世帯に1人1万円を給付し、老齢基礎年金などの受給者には5000円が加算される制度ですが、緊急経済対策は税率が10%に引き上げられる時期まで延長するよう求めています。また、児童手当受給世帯に子ども1人当たり1万円を給付する「子育て世帯への給付」の拡充も必要です。
税率が10%にアップした際の増収分から毎年7000億円程度を充てる予定の「子ども・子育て支援新制度」が来年4月から本格スタートする計画です。しかし、10%の引き上げ延期が決まったため、緊急経済対策では新制度の円滑・着実な実行に向けた財源の確保を政府に求めています。
新制度は、幼児期の保育・教育や地域の子育て支援を、質量ともに向上させ、社会全体で子育てを支えることが目的。両親に幼稚園や子育て支援事業についてアドバイスをする利用者支援専門員(仮称=イラスト参照)などきめ細かな制度が盛り込まれており、成功させる必要があります。
防災・減災、女性・若者
自然災害
今夏、広島市で発生した土砂災害によって、改めて自然災害の予測と、避難・誘導の困難さが浮き彫りになりました。災害列島に生きる日本人にとって、万全な防災・減災対策を構築しておく必要があります。
土砂災害等危険箇所の基礎調査を推進するなど、自然災害のリスクの高い地域での対策は待ったなしです。
また、御嶽山の噴火で明らかになった火山観測体制の課題も克服しなければなりません。さらに学校施設の耐震化や防災拠点の整備も促進させます。
東京電力福島第1原発の事故に伴う除染作業で排出された除染廃棄物を保管する「中間貯蔵施設」の建設や汚染土などの搬入は、今後の福島復興にとって最重要課題の一つです。公明党は「中間貯蔵施設等に係わる交付金」(仮称)の創設を訴えています。
少子化対策
少子化対策として、交付金などによる婚活支援や妊娠・出産、産後ケアなどの強化を進めます。また、子育て支援として、保育所等の緊急整備など待機児童解消加速化プランの推進を図ります。
女性の就業継続・再就職支援では、結婚や出産で離職した女性などを対象に、中小企業などでの職場実習を通して仕事に触れながら職場経験のブランクを埋める機会を提供し、スムーズな再就職につなげる「ママ・インターンシップ」の拡充も重要です。
若者支援では、就農支援として、道府県農業大学校や先進農家・先進農業法人で研修を受ける就農者に、最長2年間、年間150万円を給付するなどの青年就農給付金制度の拡充を進めます。
危険ドラッグ
意識喪失や呼吸困難などの症状を引き起こし、死亡する可能性もある危険ドラッグのまん延は深刻な社会問題です。危険ドラッグから青少年を守るため、販売業者への立ち入り検査や、乱用の取り締まりを強化し、啓発活動を推進することは緊急課題です。
国連の安全保障理事会が9月の決議で「国際の平和と安全への脅威」と位置付けたエボラ出血熱の感染拡大は深刻です。公明党は感染症対策を含む、緊急人道・復興支援を訴えています。