e障がい者虐待 孤立化や施設の閉鎖性を防げ
- 2014.11.28
- 情勢/解説
公明新聞:2014年11月28日(金)付
障がい者への人権侵害は、断じて許されない。
厚生労働省の調査によると、昨年度に全国の自治体が確認した障がい者への虐待の相談と通報は7123件に上り、そのうち3割に当たる2280件が虐待と判断された。2012年10月に施行された障害者虐待防止法に基づく初の本格調査で明らかになった。
最も多い加害者は家族で、全体の8割近くに上る。障がい者と暮らす家族の大変さやつらさは、並大抵のものではない。ただ、どのような理由があっても虐待は絶対に許されない。必要な支援策は何か、家族の声を受け止める取り組みの不足を社会全体で猛省しなければならない。
福祉施設の職員による暴行も起きている。家族が虐待の事実に気付いても、訴えると虐待がエスカレートしたり、場合によっては施設から退所を迫られないかと考え、泣き寝入りするケースも少なくない。家族の心中は複雑なものがあるだろう。
家庭であれ施設であれ、障がい者の暮らしぶりは外から分かりづらい。調査結果を踏まえ、虐待の実態や原因を徹底的に明らかにしてほしい。
公明党が法制化をリードしてきた障害者虐待防止法は、虐待に気付いた全ての人に、自治体への通報義務を課すとともに、全自治体に対応窓口の設置を義務付けている。「虐待が疑われる事態を見つけたらまず通報」の鉄則を地域社会に周知徹底してほしい。
虐待に陥りやすい家族が、気軽に相談できる仕組みも改善すべきである。自治体によっては、専門的知識を持つ職員の配置や、対応マニュアルの作成など独自の支援体制を構築している。
例えば、専従職員を配置している北九州市では、夜間や休日でも窓口の職員と連絡できる。神奈川県では、虐待通報から原則48時間以内に安否確認を行い、当面の対応を決める会議を開く独自の対応マニュアルを策定した。こうした自治体の取り組みを広げるために、政府は後押ししてほしい。
障がい者のいる家族の孤立化や、施設の閉鎖性を回避できるように、関係機関や地域社会が働き掛けられる環境をつくらなければならない。