e製造業の国内回帰 地域経済の底上げにつなげよ
- 2015.01.16
- 情勢/解説
公明新聞:2015年1月16日(金)付
家電業界で製品の生産拠点を海外から日本に移す動きが広がりつつある。
パナソニックは、縦型洗濯機と電子レンジの生産を中国から国内の工場に移転する。ダイキン工業は、中国で行っている日本向け家庭用エアコンの生産を国内に切り替え、経営再建中のシャープも栃木県内の工場で液晶テレビ、大阪府の工場で冷蔵庫の生産機種をそれぞれ増やす。いずれも、企業のトップクラスが今月に入って、相次いで明らかにしている。
製造業の国内回帰の動きが広がると、設備投資の活発化や雇用の拡大をもたらし、地域経済の底上げにつながるとみられている。連立政権が進める地方創生の追い風にもなるとの期待も膨らむ。
内閣府の調査によると、製造業が生産拠点を国内に移す理由として、(1)円安による輸出採算性の改善(2)新興国での人件費の上昇や政治的リスク(危険性)、技術漏洩の懸念(3)生産地の不十分なインフラ(社会資本)整備―などが主因になっている。
注目したいのは、これらの理由のほかに、高品質・高付加価値製品の生産拠点、あるいは技術力を維持するための研究開発と生産を一体で行う最適地として、国内への立地を再評価している点だ。既に、米国の製造業の一部は、この考えを具体化するために、国内の生産を増強する動きを強めている。日本企業が高付加価値のものづくりの国際競争で優位に立てれば、為替相場に振り回されることも少なく経営は安定する。地域経済にとってもプラスに働く。
国内回帰を決めた企業幹部の記者会見では、「企業は日本経済に貢献する義務がある」(ダイキン工業の井上礼之会長)、「メード・イン・ジャパンを新たにアジア地域に輸出したい」(パナソニックの津賀一宏社長)と心強い言葉が飛び出した。
内閣府が実施したヒアリングによると、企業が国内回帰を検討する場合には、為替の安定のほかに安価で安定的なエネルギーの供給、法人税減税、環太平洋連携協定(TPP)など自由貿易の推進を課題に挙げている。
製造業の国内回帰を本格化するため、政府は必要な対策を進めてほしい