e日豪EPA発効

  • 2015.01.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年1月17日(土)付




畜産、酪農家への支援強化せよ



日本と豪州のEPA(経済連携協定)が15日に発効した。EPAは、特定の国との間で関税を減らしたり、ビジネス上のルールを定めたりする包括的な経済協力だ。牛肉など消費者に身近な商品の値下げにつながる今回の協定を歓迎する声が出ている半面、苦しい経営を迫られる農家の懸念は強い。政府は、畜産、酪農家の支援をしっかりと行ってもらいたい。


豪州とのEPAは、国内市場に大きな影響をもたらす。豪州産牛肉の関税は発効前の38.5%から32.5%となり、流通各社は、今後の仕入れ価格低下を見越して特売を実施。店頭には早くも1割程度安い牛肉が並ぶ。今後7年間かけて関税が撤廃される豪州ワインを、先行して2割近く値引きする業者もある。乳製品や豚肉なども価格下落の圧力がかかる。


家計を助け、産業界の商機を広げる日豪EPAが、日本経済にさまざまな利点をもたらすことは間違いない。


一方で、国内の畜産、酪農家の現状にも留意が必要だ。市場で安い輸入牛肉が出回る中、為替の変動や新興国での需要増を受けて家畜のえさ代は高止まりしているので、農家の経営は悪化している。この結果、国内の肉用牛飼養戸数は5万7500戸となり、前年に比べ6.2%も減少(昨年2月時点)。最多だった1960年当時の3%程度にまで落ち込んだ。酪農家も、この10年で約4割減り「国内の畜産は崩壊の危機にある」と関係者は憂慮している。


農林水産分野の来年度政府予算案では、畜産の強化を図り、EPAの打撃から国内農家を守る施策が盛り込まれた。えさ代高騰などに備える経営安定策に1831億円を計上したほか、個別農家の規模拡大を支える費用も新規で約75億円盛り込んだ。制度の周知と利用を促し、農家経営の下支えにつなげたい。


積極的な"攻め"の姿勢による市場の開拓も必要だ。海外での和牛の評価は高く、昨年は過去最高の輸出額を記録。政府は輸出先のさらなる拡大へ関係国との協議を進めている。畜産業界も先月に輸出促進協議会を設立し、取り組みを加速させる。攻守両面に目配りが届いた施策を進め、農家の活力を取り戻したい。

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