eコラム「北斗七星」
- 2015.02.02
- 情勢/社会
公明新聞:2015年1月31日(土)付
19世紀末、イタリアの経済学者ビルフレド・パレートは、統計分析によって、同国の富の80%が、人口20%の高額所得者に集中している事実を突き止めた。「パレートの法則」「80対20の法則」などと呼ばれている◆19世紀半ば、全盛を極めた米国の捕鯨業界では、船長、航海士と乗組員の賃金格差の拡大が問題視されていた。『クジラとアメリカ』(エリック・ジェイ・ドリン著)によると、「上の者はより多くを得、下の者はますますその割を食わされた」。「来る世紀にアメリカの労働力が二極化するだろう大きな社会格差」が予想されていたのである◆格差問題は今も続く。世界的規模での調査によると、米国では現在、上位1%の富裕層の所得が、全体の約20%を占めるに至った。これは、大恐慌(1929年)前と同水準であり、「われわれは99%だ」を掲げるウォールストリート占拠運動をもたらしている◆経済成長は、経済的な不平等や格差を伴う。多くの先進国政府は、福祉国家をめざし、経済の持続的な発展のため、社会保障制度を充実させ、成長と福祉の調和に取り組んできた◆現在、格差拡大に警鐘を鳴らすトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が世界各国で大きな反響を呼んでいるのは、格差是正を求める新たな機運が高まっているからであろう。(山)